ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦1184年、イスラム教徒支配下のスペイン南部アンダルシア地方の古都セビリアでヒラルダの塔が建設された。


ヒラルダの塔、アンダルシア地方の古都セビリアにそびえる

西暦1184年、スペイン南部アンダルシア地方古都セビリアヒラルダの塔(下の画像)の建設が始まった。その塔が完成したのは西暦1198年のことだった。

スペイン南部アンダルシア地方の古都セビリアにそびえるヒラルダの塔

この古都セビリアにそびえるヒラルダの塔は、今でこそキリスト教徒の大聖堂の鐘塔になっているけれども、元々はイスラム教徒のモスクのミナレット(尖塔)として建てられたものだった。当時のスペイン南部アンダルシア地方はイスラム教徒の支配下にあったからね。

モロッコのイスラム教徒勢力が争ったスペイン南部アンダルシア地方

西暦711年にイベリア半島の西ゴート王国を滅ぼしたイスラム教徒勢力は、西暦756年には後ウマイヤ朝を建てている。その後、10世紀末から11世紀にかけて後ウマイヤ朝の古都コルドバは世界最大の都市となるほどに繁栄したんだそうな。

ところが、その後ウマイヤ朝は西暦1031年に滅亡し、スペインのイスラム教徒勢力は分裂してしまった。その結果、キリスト教徒のカスティーリャやアラゴンなどによるレコンキスタ(国土回復運動)に押され、古都トレドなども奪われてしまった。

そんな状況を好転させる為、スペイン南部のイスラム教徒が支援を求めたのが、アフリカ北部のイスラム教徒勢力だった。その結果、西暦1091年にはアンダルシア地方をムラービト朝が支配している。

ところが、そんなムラービト朝に挑戦したのが同じくアフリカ北部に興ったムワッヒド朝だった。ムワッヒド朝はまずモロッコで戦いを始め、やがて12世紀後半にはスペイン南部アンダルシア地方に進出し、ムラービト朝の残存勢力やレコンキスタを進めるキリスト教徒たちと戦いを続けた。古都セビリアのヒラルダの塔は、そんな状況で建設されたんだ。

モロッコのカサブランカにあるハッサン2世モスク

上の画像はモロッコのカサブランカにあるハッサン2世モスク(西暦1993年に完成)なんだけど、ミナレット(尖塔)がセビリアのヒラルダの塔に似ているよね 。ヒラルダの塔もかつてはモスクの横でこんな風にそびえていたのかもしれないね。(このハッサン2世モスクの画像は知人から戴いたもの。)

古都セビリアのモスクの脇にあったヒラルダの塔

このアンダルシアの古都セビリアのヒラルダの塔の高さは 105メートルもあるんだそうな。その70メートルの高さまで登ることが出来るんだけど、そんなヒラルダの塔からすぐ下を眺めたのが下の画像。

スペイン南部アンダルシア地方の古都セビリアにそびえるヒラルダの塔から見下ろしたナランハ(オレンジ)の庭

上の画像に見えているのは、ヒラルダの塔の脇にある大聖堂のナランハ(オレンジ)の庭なんだけど、とっても小さく見えている人々の姿から塔の高さが想像できるよね。

このナランハ(オレンジ)の庭はかつてはイスラム教徒のモスクの庭だった。ところが、西暦1248年にカスティーリャ王フェルナンド3世が古都セビリアを征服し、モスクはキリスト教徒の教会にされちゃったらしい。

その後、西暦1356年にスペイン南部アンダルシア地方で地震が起こった。ヒラルダの塔は無事だったけれども、隣の教会(元のモスク)は破壊されてしまった。そこで西暦1401年から建て替えられたのが、今のセビリアの大聖堂なんだそうな。

スペインの歴史を眺めてきた古都セビリアのヒラルダの塔

その後もヒラルダの塔は古都セビリアにそびえ続け、スペインの歴史を眺めてきたんだ。例えば、グラナダが陥落した年にコロンブスがアメリカを発見したんだけど、新大陸と行き来するスペインの船は、必ずこのセビリアを窓口とすることになっていた。

ハプスブルク家のスペイン王カルロス1世(皇帝カール5世)は、このセビリアでポルトガルの王女と結婚し、やがて生まれた息子フェリペ2世はスペインに加えてポルトガルの王位をも得ることになる。

そのフェリペ2世が勝利を得たレパントの海戦で負傷したセルヴァンテス(小説「ドン・キホーテ」の作者)は、このセビリアで破門されたり、刑務所に入れられたりもしたんだそうな。

スペイン南部アンダルシア地方の古都セビリアにそびえるヒラルダの塔から眺めたグアダルキビル川方面

そんなスペインの歴史を見続けてきたヒラルダの塔から眺めた古都セビリアの風景が上の画像なんだけど、斜めに立つ白い柱は西暦1992年のセビリア万博の際に架けられたアラミロ橋のもの。その下には古都セビリアを海と結ぶグアダルキビル川が流れている。かつてはその川を多くの船が行き来していたんだろうね。

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