ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦844年、ヴァイキングがイスラム教徒支配下のリスボン(今のポルトガルの首都)やセビリア(スペイン南部アンダルシア地方の街)を略奪した。


ノルウェーなどのフィヨルドで暮らしていたヴァイキング

北欧のノルウェーにはいくつものフィヨルドがあるんだけど、その最大のものがソグネ・フィヨルドなんだそうな。下の画像はそんなソグネ・フィヨルドの風景なんだけど、静かで平和そのものだよね。

ノルウェーのソグネ・フィヨルドの風景

そんなフィヨルドで暮らしていた「入り江の人々」(英語ではヴァイキングと呼ばれる)が、9世紀の半ばからヨーロッパ各地で略奪を行い、人々に怖れられたわけだ。彼らはアイルランドやスコットランドの修道院などを襲い、フランス北部のノルマンディーや更にはパリまでも侵攻したらしい。

大西洋を南下し、リスボンを略奪したヴァイキング

イギリスやフランスを混乱に陥れたヴァイキングたちは、ヨーロッパ北部にとどまってはいなかった。やがて彼らは大西洋を南下している。下の画像はユーラシア大陸の最西端とされるポルトガルロカ岬なんだけど、この沖の海をヴァイキングたちは進んでいったんだろうね。

ユーラシア大陸の最西端、ポルトガルのロカ岬と大西洋

そして西暦844年、ノルウェーから南下してきた50隻以上の船に乗ったヴァイキングがリスボンを略奪した。いうまでもなく今のポルトガルの首都なんだけど、当時は西暦711年にイベリア半島に侵攻したイスラム教徒の支配下にあったんだ。キリスト教徒を怖れさせていたイスラム教徒も、自分たちがヴァイキングに襲われるとは思わなかっただろうね。

スペイン南部の古都セビリアを略奪したヴァイキング

リスボンを略奪したヴァイキングは更に進み、ジブラルタル海峡を越え、今のスペイン南部アンダルシア地方を流れるグアダルキビル川を遡っていった。そして西暦844年の秋には古都セビリアを略奪している。

スペイン南部アンダルシア地方の古都セビリアのヒラルダの塔から眺めた街並み

上の画像は古都セビリアにある世界遺産ヒラルダの塔からの眺めなんだけど、左手遠くに見えている斜めに立つ白い柱はグアダルキビル川にかかる橋の支柱なんだ。あのあたりをグアダルキビル川が流れているわけだ。

ちなみに、このグアダルキビル川は河口から船が遡り、この古都セビリアまで来ることが出来たらしい。コロンブスが新大陸アメリカを発見し、コルテスやピサロがアステカ帝国やインカ帝国などを征服し、新大陸から莫大な富がカルロス1世フェリペ2世のスペインに流れ込んできたんだけど、その船は必ずこのセビリアに寄港することが義務付けられていた。

古都セビリアから更に進んだヴァイキング

古都コルドバを首都として繁栄していた後ウマイヤ朝はイベリア半島の大部分を支配していた。そんな状況で首都にも近いセビリアが襲われることなどないとイスラム教徒たちは思っていたらしい。セビリアには街を守る城壁もなかったんだそうな。

ヴァイキングたちはセビリアをあっけなく占領し、モスクに逃げ込んでいた多くの人々が殺されたらしい。下の画像は古都セビリアのヒラルダの塔をセビリア大聖堂のナランハ(オレンジ)の庭から眺めた様子。このナランハ(オレンジ)の庭は元々は大モスクの庭だった。ここでも多くのイスラム教徒がヴァイキングの犠牲になったのかもしれないね。

スペイン南部アンダルシア地方の古都セビリアのヒラルダの塔を大聖堂のナランハ(オレンジ)の庭から見上げた

一週間以上も古都セビリアで略奪を行ったヴァイキングたちは、騎馬隊で更に奥地の略奪をしようとしていたらしい。ところが、ようやく態勢を立て直した後ウマイヤ朝の軍がヴァイキングを撃ち破ったんだそうな。多くのヴァイキングが殺され、多くの船が焼かれたらしい。逃げおおせたヴァイキングたちは、フランス南部プロヴァンス地方に向かったとか。

その後の後ウマイヤ朝はヴァイキングに対する守りを固めている。海岸のあちこちに見張り台を置き、更には多くの船を建造して巡視させたんだそうな。それでもヴァイキングたちの襲撃を完全に防ぐことはできなかったらしい。ヴァイキング、おそるべし。

ついでながら、ヴァイキングたちは南にむかっただけじゃなかった。彼らは西にも向かい、西暦874年頃にはアイスランドにも植民している。更にはグリーンランドを発見し、アメリカ大陸にまで到達した連中もいたんだそうな。

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