ヨーロッパの歴史風景 先史・古代編




西暦117年、多くの建築物を残した古代ローマ帝国皇帝ハドリアヌスが即位。


古代ローマ帝国皇帝ハドリアヌス

何年か前のことなんだけど、イギリスの首都ロンドンへの出張中に雨の日の余った時間を大英博物館で過ごしたんだ。その中の古代ローマ関連の展示で私の眼に止まったのが、下の画像にある彫像だった。

いったい誰の彫像なのかな。その横にあるプレートを見れば、古代ローマ帝国の皇帝ハドリアヌスだそうな。なるほど、イギリスに縁の深い皇帝だね。スコットランドとの国境付近に今も残るハドリアヌスの長城(城壁)を築いた人物だ。

イギリスの首都ロンドンの大英博物館で見た古代ローマ帝国皇帝ハドリアヌスの彫像

余談ながら、後で気づいたんだけど、上の画像の左下の部分に小さく写っている横顔は、同じく古代ローマ帝国の皇帝クラウディウスだった。フランス第2の都市リヨンで生まれ、後に古代ローマ帝国の皇帝となった彼は、かつてカエサル(シーザー)が遠征を行ったブリタニア(イギリス)に進出して、ロンディニウム(今のロンドン)を建設させた人物だね。

皇帝ハドリアヌスの誕生から古代ローマ帝国の政策転換まで

後に古代ローマ帝国の皇帝となったハドリアヌスは、西暦76年にスペインで生まれた。その父親は、古代ローマ帝国最大の版図を築いた皇帝トラヤヌスと同郷の出身で、しかも従兄弟の関係にあった。そんなところからハドリアヌスの出世が始まるんだ。

更にハドリアヌスは西暦100年には皇帝トラヤヌスの姪の娘サビナと結婚し、皇帝トラヤヌス一族とのつながりを強化している。

そして西暦117年、遠征に出ていた古代ローマ帝国の皇帝トラヤヌスが亡くなった。軍団を委ねられてシリアにいたハドリアヌスは、直ちにイタリアのローマに戻った。そこで亡き皇帝トラヤヌスの妃プロティーナの支持を得たハドリアヌスが、次の皇帝として即位することになったんだ。

ヨーロッパ内陸部に侵攻し、ダキア(ルーマニア)を征服するなど、古代ローマ帝国の領土を拡大し続けたトラヤヌス帝に仕えていたハドリアヌス。でも、皇帝に即位すると直ちに先帝の政策を転換したんだ。つまり、領土拡大策は放棄し、平和路線に切り替えている。但し、その政策転換に反対する将軍たちを処刑しちゃったんだけどね。

続いて西暦121年からは、古代ローマ帝国の領土となっている各地を旅行して回った。といっても、私のような物見遊山の旅じゃない。各地の統治の状況を自分の目で見て、内政を固める為の旅だったんだ。しかも、辺境地帯の防備を固める為の施策をも行っている。その一つがイギリス北部スコットランドの国境付近に残るハドリアヌスの長城(城壁)の建設だったんだ。

晩年の皇帝ハドリアヌス

西暦130年、ローマ帝国内の各地を巡幸していた古代ローマ皇帝ハドリアヌスは、エジプトを訪れていた。ところが、皇帝の愛した美少年アンティノスがナイル川で溺死してしまった。この事件は皇帝ハドリアヌスをとっても哀しませたんだそうな。

やがて、ローマに戻って建設工事に打ち込んでいたハドリアヌスを病魔が苦しめるようになった。更に、皇帝はルキウス・ウェルスを養子・後継者としたんだけど、その後継者が皇帝よりも早く亡くなってしまった。

イタリアの首都ローマを流れるティベル川とサンタンジェロ城

皇帝ハドリアヌスはアントニヌス・ピウスを養子・後継者とし、イタリア南部カンパーニャ地方のナポリ近くの保養地に移り住み、老後を過ごしたんだそうな。そして西暦138年、古代ローマ皇帝ハドリアヌス(享年62歳)が亡くなった。その遺骸はローマの霊廟(今のサンタンジェロ城)に葬られた。上の画像が今のローマのサンタンジェロ城の様子だ。

ついでながら、上の画像に見えるサンタンジェロ橋の上に立つ天使像の中には、サン・ピエトロ広場サン・ピエトロ大聖堂の中のブロンズのバルダッキーノなどで名高いイタリア・バロックの彫刻家ベルニーニが制作したものもあったんだ。今ではレプリカに置き換えられちゃったけどね。

学者にして芸術家・建築家だった皇帝ハドリアヌス

有能な軍人でもあり政治家でもあった古代ローマ帝国皇帝ハドリアヌスなんだけど、同時に彼は学問や芸術にも才能があったらしい。特に天文学・哲学や美術についでの知識は深く、他方で詩を作り楽器を演奏し歌うこともあったんだそうな。

でも、彼が最も興味を持っていたのは、建築だったみたい。今もローマに残るパンテオンを再建したのも彼だった。(そのパンテオンを研究したブルネレスキは、その成果をフィレンツェのドゥオモに活かした。)

そして、今もローマを流れるティベル川に姿を映す彼の墓廟(今のサンタンジェロ城)も皇帝ハドリアヌスの見事な作品なのかもしれないね。

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