ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦1194年、神聖ローマ帝国皇帝ハインリヒ6世がイタリア南部の街サレルノを攻略し、シシリアへ向かった。


イタリア南部の街サレルノを攻略した皇帝ハインリヒ6世

西暦1194年、神聖ローマ帝国皇帝ハインリヒ6世の大軍が南下してきた。でも、イタリア南部の街サレルノは、皇帝に対して門を開かなかった。しかし、相手は皇帝の大軍だ。結局は守り抜くことは出来ず、サレルノの街は皇帝によって攻略されたわけだ。

皇帝軍の兵士たちはサレルノの街を荒らしまわった。特にお宝に溢れていたサレルノのドゥオモ(大聖堂)に対する兵士たちの略奪は激しく、その修復には数十年もかかったんだそうな。(下の画像は今のサレルノのドゥオモの内部の様子。)

イタリア南部カンパーニャ地方の街サレルノのドゥオモ(大聖堂)の内部

ちなみに、このサレルノのドゥオモ(大聖堂)を建立したのは、11世紀にサレルノを征服したロベール・ギスカールだった。その弟の子孫が皇帝ハインリヒ6世の皇后コンスタンツェだった。歴史は皮肉なものだよね。

シシリア王位を主張した皇帝ハインリヒ6世

ハインリヒ6世の父フリードリヒ1世は西暦1189年に亡くなっている。その後継者たるハインリヒ6世は、西暦1191年にイタリアのローマに赴き、教皇ケレスティヌス3世によって神聖ローマ帝国皇帝として戴冠したそうな。

イタリアの首都ローマのヴァティカンにあるサン・ピエトロ大聖堂の内部

上の画像は今のローマのサン・ピエトロ大聖堂の内部なんだ。但し、今のサン・ピエトロ大聖堂の建設は西暦1506年に始まっているから、皇帝ハインリヒ6世の頃には古代ローマ帝国の皇帝コンスタンティヌスが献上した大聖堂があったみたいだけどね。

ナポリで敗れた皇帝ハインリヒ6世

ところが、神聖ローマ帝国皇帝ハインリヒ6世は、ローマでの戴冠を終えて帰国したわけじゃなかった。彼は軍を率いて更に南下したんだ。というのも、彼の皇后コンスタンツェは、シシリアなどイタリア南部を支配するノルマン王家の正統の後継者だったから。

西暦1189年にシシリア王グリエルモ2世が亡くなった結果、皇后コンスタンツェとその配偶者である皇帝ハインリヒ6世がシシリアの支配者たるべきだと主張したわけだ。ところが、シシリアの人々によって支持されたタンクレディ(亡くなったグリエルモ2世の従兄)がシシリア王となった。その王位を奪い取るべく、皇帝ハインリヒ6世の軍は南下していったわけだ。

イタリア南部カンパーニャ地方の街ナポリの卵城

皇帝ハインリヒ6世の軍はイタリア南部の街ナポリを包囲した。ところが皇帝軍の陣には疫病が蔓延し、他方で皇帝の本拠である神聖ローマ帝国では反乱が相次いだ。(上の画像はノルマン王家がナポリのサンタ・ルチア近くに築いた卵城。)

結局、皇帝ハインリヒ6世の軍はナポリを落とすことが出来ず、南下を諦めて兵を引くことになったんだ。しかも、その際に皇后コンスタンツェは敵の捕虜となったらしい。教皇の仲介によってすぐに解放されたらしいけどね。

サレルノを経てシシリアを攻略した皇帝ハインリヒ6世

西暦1191年のイタリア南下に失敗した皇帝ハインリヒ6世だったけれども、そこでシシリア王位奪取を諦めたわけじゃなかった。十字軍の遠征から帰国途中のイングランドのリチャード1世(後にフランスの首都パリの北にある要衝ガイヤール城を築いた王)がオーストリアで捕えられたんだけど、それが再起につながったんだ。

オーストリア公からリチャード1世の引渡を受けた皇帝ハインリヒ6世は、その解放と引き換えに巨額の身代金を受け取った。その身代金が再度のイタリア遠征の軍資金となったわけだ。

神聖ローマ帝国の内乱の芽を摘み取った皇帝は、西暦1194年にイタリア南下を始めた。やがてナポリを通過し、このページの冒頭で書いたようにサレルノの街を征服したわけだ。(下の画像は中世の面影を残すサレルノ旧市街にあるメルカンティ通りの様子。)

イタリア南部カンパーニャ地方のサレルノ旧市街のメルカンティ通り

もちろん、皇帝ハインリヒ6世のイタリア遠征は更に続く。やがてシシリアを征服し、シシリア王となった。既にタンクレディは亡くなっており、シシリア王位を継承したその息子のグリエルモ3世(9歳で即位)やその母も捕われの身となった。幼いグリエルモ3世は両目をつぶされて幽閉され、その母や姉妹たちはアルザスで監禁されたらしい。

とはいえ、シシリアを含むイタリア南部の争奪戦はその後も次々とドラマを生み出し続けるんだ。シャルル・ダンジュールネ・ダンジューシャルル8世フェルナンド2世などがドラマの主役となっていくわけだ。

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