ヨーロッパの歴史風景 近世編




西暦1705年、ルイ14世太陽王のフランス軍がコート・ダジュールの街ニースを包囲した。


常に戦いの舞台となったコート・ダジュールの街ニース

フランス南部コート・ダジュールの街ニースといえば、地中海でも有数の観光地だよね。7年以上もイギリスの首都ロンドンに住んでいた私にとっては、暖かくて明るくて食べ物も美味しい素敵な場所だった。(下の画像は、早春のニースのカーニバルの花のパレードの様子。)

フランス南部コート・ダジュールの街ニースのカーニバルの花のパレード

でもね、このニースは常に戦いの舞台になってきた場所だった。紀元前600年頃に今のフランス南部プロヴァンス地方港町マルセイユ古代ギリシャ人が定住したんだけど、その古代ギリシャ人たちが紀元前350年頃にニースを築いたらしい。

その古代ギリシャ人たちはこの付近で土着のリグリア人と戦って勝った。その勝利を記念して、古代ギリシャの勝利の女神ニケにちなんで名づけたのが、ニースという街の名前だった。その街がずっと戦いの舞台となってきたのも、なんだか因果な話だよね。(余談ながら、「サモトラケのニケ」はフランスの首都パリルーブル美術館で見ることができる。)

ニースがサヴォワ公家の領地となった

古代ギリシャ人の後は、エクサン・プロヴァンス(エクス)リヨンに拠点を置いた古代ローマ帝国がやって来た。それからゲルマン諸族が襲来。次いで 8世紀初頭にイベリア半島を征服したイスラム教徒が来て、10世紀にプロヴァンス伯ギョーム1世によって駆逐されるまでイスラム教徒が今のフランス南部一帯を蹂躙したんだ。

その後のニースも引き続き戦いの舞台となっていた。神聖ローマ帝国皇帝、フランス王、プロヴァンス伯、ピサ、ジェノヴァなどが綱引きを繰り返し、ニースはあちらに引かれ、こちらに踏みつけられる存在だった。

フランス南部コート・ダジュールの街ニースのサレヤ広場の食べ物市とサヴォワ公家宮殿

そして西暦1388年、ニースはサヴォワ公の領地となった。ニースの争奪戦はまだまだ続くんだけど、基本的に19世紀までニースはサヴォワ公の支配下にあった。(上の画像はニースのサレヤ広場の食べ物市とサヴォワ公家宮殿の風景。)

ニースを包囲したルイ14世太陽王のフランス軍

それからはニースの領主であるサヴォワ公と神聖ローマ帝国皇帝に対するフランス王との戦いが争いの主軸となっていった。特にハプスブルク家の皇帝カール5世フランス王フランソワ1世は戦いを繰り返し、その戦火はニースにも及んでいた。

そしてパリ郊外にヴェルサイユ宮殿を造営したことで名高いルイ14世太陽王の時代になる。まずはアウクスブルク同盟戦争の最中の西暦1691年にニースがフランス軍に占領され、サヴォワ公に返還されたのは5年後のことだった。

更には西暦1701年にスペイン継承戦争が始まり、西暦1705年にニースはフランス軍に包囲され、翌年には陥落して城砦・城壁が破壊された。そんなニースがサヴォワ公に返還されたのはユトレヒト条約が結ばれた西暦1713年のことだった。

ルイ14世太陽王が亡くなって後も、ニースは何度もフランス軍の攻撃を受けている。西暦1744年にはフランス・スペイン連合軍に攻略されて、4年間も占領されていた。フランス革命後の西暦1792年にもフランス軍に占領され、サルディニア王家(元のサヴォワ公家)に返還されたのは皇帝ナポレオンが失脚した西暦1814年のことだった。

フランス南部コート・ダジュールの街ニースのサント・レパラテ大聖堂

そんなこんなで2000年を越える歴史の中でニースは何度も何度も包囲され、攻撃され、陥落し、占領されてきたんだ。上の画像はそんなニースの大聖堂(サント・レパラテ大聖堂)なんだけど、ここでニースの人々は繰り返し繰り返し平和を祈ったことだろうね。

イタリア統一の為にフランスに割譲されたニース

その後のニースには、暗くて長くて湿っぽい冬を避ける為にイギリス人が来るようになった。そしてニースの海岸通プロムナード・デ・ザングレが作られたのが西暦1820年。(下の画像はその海岸通から眺めた地中海。)

フランス南部コート・ダジュールの街ニースの海岸通プロムナード・デ・ザングレから眺めた地中海

他方で、19世紀にはイタリア統一に向けての動きが活発になり、ナポレオン帝国占領下のニースで生まれたジュゼッペ・ガリバルディナポリを征服した翌年の西暦1861年には統一イタリア王国が成立している。

でも、その統一の際に得た支援の見返りとして、ガリバルディの故郷ニースはフランスに割譲されたんだ。もちろん、故郷をフランスに引き渡されたイタリア統一の英雄ガリバルディは怒った。でも、長く続いたニースをめぐる争奪戦は終わったとは言えるのかも ・・・ 。(一部のイタリア人の中にはニースなどの回復を主張する人々もいるし、第一次世界大戦や第二次世界大戦の際には戦火が及んだけど ・・・ 。)

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