ヨーロッパの歴史風景 近世編




西暦1626年、ローマ教皇ウルバヌス8世によってサン・ピエトロ大聖堂の献堂式が挙行された。


ローマのサン・ピエトロ大聖堂の献堂式

イタリアの首都ローマを訪れる観光客の多くは、ヴァティカンにあるサン・ピエトロ大聖堂(下の画像)に足を運ぶんだろうね。

イタリアの首都ローマにあるサン・ピエトロ大聖堂の内部

このサン・ピエトロ大聖堂はローマ・カトリックの中枢でもあり、更にはイタリアの芸術作品の宝庫でもあるよね。上の画像の奥にはバロックの彫刻家ベルニーニの手によるバルダッキーノ(天蓋)聖ペテロの司教座も見えている。上の画像には写っていないけど、すぐ右手にはミケランジェロのピエタもあるんだ。

このサン・ピエトロ大聖堂の建築が始まったのは西暦1506年のこと。ローマ教皇ユリウス2世によって工事が始められたんだ。そして献堂式は西暦1626年。それを挙行したのが教皇ウルバヌス8世だった。

ローマ教皇ウルバヌス8世

ローマ教皇ウルバヌス8世は西暦1568年にフィレンツェの豪商の家に生まれている。ローマやピサで学んだ彼は、伯父の引きによって教皇庁に勤め、やがて教皇の側近となっている。

そして西暦1604年、彼はローマ教皇の大使としてフランスの首都パリに派遣された。下の画像は当時のフランス王アンリ4世の胸像。パリのサン・ドニ大聖堂の地下にある王家の墓所で見ることが出来るんだ。

フランスの首都パリのサン・ドニ大聖堂の地下にある王家の墓所で見たフランス王アンリ4世の胸像

西暦1606年には枢機卿となり、西暦1617年にはボローニャに派遣されている。そんな彼がローマ教皇ウルバヌス8世として即位したのは、西暦1623年のことだった。

ローマ教皇ウルバヌス8世の政策

ローマ教皇ウルバヌス8世は、教皇庁の軍事力の強化に力を注いだらしい。教皇領に要塞を築き、兵器工場を建て、ヴァティカンのサンタンジェロ城を増強している。その結果、ウルビーノ公領の併合などによって、教皇領を広げることに成功したらしい。

他方、イタリアでのハプスブルク家の勢力を抑える為にフランス王家との連携した。そのフランスは三十年戦争でスウェーデンやオランダなどの新教国と同盟しており、そんなフランスと結んだローマ教皇の権威を低下させてしまったんだそうな。

イタリアの山中にあるサン・マリノ共和国の街並み(第一の砦 グアイタの塔からの眺め)

そんなローマ教皇ウルバヌス8世の業績のひとつに、イタリアの山中にあるサン・マリノ共和国を独立国として承認したことがある。西暦1631年のことだった。(上の画像は、チタン山上にあるサン・マリノ共和国の第一の砦 グアイタの塔から眺めた街の様子。)

教皇ウルバヌス8世による学問と芸術の保護、でも ・・・

ローマ教皇ウルバヌス8世は学問と芸術を保護したことでも知られている。例えば、冒頭に画像を掲げたサン・ピエトロ大聖堂にバルダッキーノ(天蓋)を残すベルニーニの支援者の一人でもあったそうな。

他方で、学生時代からの友人だったガリレオ・ガリレイの裁判にも関与している。西暦1633年、教皇ウルバヌス8世の下での宗教裁判において、ガリレオは地動説の主張を放棄させられ、終身刑を宣告されたんだそうな。(その宗教裁判について、西暦1992年に教皇ヨハネ・パウロ2世がガリレオに謝罪している。)

加えて、ローマ教皇ウルバヌス8世の下で彼の縁者が教皇庁において高い地位に登用されている。例えば、彼の弟や甥たちが枢機卿に任じられたらしい。

軍事費の増大による財政の悪化、新教国と同盟するフランスとの連携、多くの縁者を昇進させた縁故主義などにより、教皇ウルバヌス8世に対する人々の反感は強まるばかりだった。そんな教皇に対してローマの人々は暴動を起こしたらしい。そんな状況で教皇ウルバヌス8世は亡くなったんだそうな。西暦1644年のことだった。

イタリアの首都ローマのヴァティカン美術館・博物館にある教皇ウルバヌス8世の礼拝堂

そんなローマ教皇ウルバヌス8世の礼拝堂ヴァティカン美術館・博物館の一画に残されている。上の画像がその様子なんだ。照明も無くて暗いし、立ち止まる観光客もいなくて、全く目立たない場所なんだけどね。

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