ヨーロッパの歴史風景 近世編




西暦1527年、ヴァロア朝のフランス王フランソワ1世が、パリのルーブル要塞(今は美術館)を王宮と定めた。


王宮となったルーブル要塞

フランスの首都パリを訪れる海外からの観光客の多くは、ルーブル美術館へ行くんだろうね。そのルーブル美術館のそもそもの姿は、西暦1190年に築かれた要塞だった。当時フランス北部のノルマンディー地方を領有していたプランタジネット家のイングランド王リチャード獅子心王から首都パリを守るためにフランス王フィリップ2世が築かせたんだそうな。

フランスの首都パリにあるルーブル美術館をオルセー美術館から眺めた

そんなルーブル要塞を王宮として使うこととしたのがフランス王フランソワ1世だった。(上の画像は現在のルーブル美術館をオルセー美術館のテラスから眺めた様子。)

フランソワ1世以前のフランス王たちは、パリよりもロワール川のほとりのブロワ城などに滞在していたらしい。フランソワ1世も奥方でフランス王ルイ12世の王女だったクロード・ド・フランスが亡くなる前はロワール川のほとりの城館で過ごしていたんだけどね。

王宮としてのルーブル

ルーブル要塞を王宮として改築する工事は、フランソワ1世の代では終わらなかった。工事を完成させたのは、その息子のフランス王アンリ2世だったらしい。

そのアンリ2世が亡くなるとその王妃だった未亡人カトリーヌ・ド・メディチは、ルーブルの西側にテュイルリー宮殿を建てる工事を始めたんだそうな。(そのテュイルリー宮殿は西暦1871年に燃え落ちて、今ではテュイルリー庭園しか残っていないけど。)

そのカトリーヌ・ド・メディチの息子たちの時代にフランスの宗教戦争が激化したんだけど、その惨禍を生き延びたブルボン家初代フランス王アンリ4世は、ルーブル王宮とテュイルリー宮殿とを結ぶ回廊を建てさせたんだそうな。その拡張工事はルイ13世の時代にも続いたらしい。

そしてヴェルサイユ宮殿を造営したフランス王ルイ14世太陽王だ。彼はルーブル王宮とテュイルリー宮殿とを結ぶ建物(回廊ではなく)の建設を始めている。が、やがてはヴェルサイユ宮殿に移ってしまい、二つの宮殿を結ぶ建物は完成に至らなかったらしい。

そんなわけでフランス王ルイ14世をはじめとする王宮の人々がヴェルサイユに移り、他方でパリのルーブルには芸術家など様々な人が住み着き、やがて荒れ果てていったんだそうな。

フランス革命とルーブル美術館

そして西暦1789年、フランス革命が始まった。修道院などの財産は没収され国有化され、ルイ16世もマリー・アントワネットも処刑された。そしてルーブル王宮は美術館とされたんだ。

フランスの首都パリにあるルーブル美術館にあるダヴィドの「皇帝ナポレオンの戴冠式」

そんな革命からやがてフランス皇帝ナポレオンが登場するんだけど、ダヴィドが描いた「皇帝ナポレオンの戴冠式」(上の画像)もルーブル美術館で見ることができる。(この戴冠式はパリのノートルダム大聖堂で行われた。)

テュイルリー宮殿とルーブル美術館の運命の明暗

その後もフランスには何度か革命の嵐が吹き荒れ、その度に民衆がテュイルリー宮殿などを襲ったりしている。例えば、西暦1830年にはフランス七月革命の際にもそうだったんだ。(下の画像はルーブル美術館にあるドラクロワの「民衆を率いる自由の女神」なんだけど、そのフランス七月革命を描いている。)

フランスの首都パリにあるルーブル美術館にあるドラクロアの「民衆を率いる自由の女神」

結局、西暦1871年に普仏戦争でフランスが敗れた後にパリの民衆が起こしたパリ・コミューンの際に、テュイルリー宮殿は燃え落ちてしまったわけだ。その際にも隣にあるルーブル美術館は無事だった。ルーブル美術館の中の芸術作品などが破壊されなかったのは、フランスのみならず世界全体の人々の為にも幸いだったね。

ルーブル美術館ではスリに注意

全くの余談を一つ。西暦2013年4月18日に外務省の海外安全ホームページに掲載された注意喚起によれば、パリのルーブル美術館でスリが多発しているらしい。その要点を書いておくね。

  • アジア人旅行者の被害が多い。特に日本人が狙われているとの報道もある。
  • 犯人は若者が多い。
  • モナリザなど人気の展示物の前、つまりは混んでいる場所では特に注意が必要となる。
  • カメラで撮影をする隙を狙われる。
  • ズボンの後ろのポケットに財布などを入れない。
  • 話しかけてくる人物にも警戒すべし。

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