ヨーロッパの歴史風景 近代・現代編




西暦 1799年、エジプト遠征から帰国したナポレオンが、フランスに統領政府を樹立した。


ナポレオンによるマルタ島の占領

西暦1796年に始まるイタリア遠征で国民的な英雄となったナポレオンは、次の目標をエジプトと定めた。フランスの宿敵であるイギリスを支えるエジプトとの通商を遮断することが狙いだった。

西暦1798年5月、ナポレオンと兵たちを乗せたフランス艦隊は、地中海を東に向かった。そのフランス艦隊が寄り道をしたのが、聖ヨハネ騎士団の統治下にあったマルタ島だった。

西暦1565年には上陸してきたオスマン・トルコの大軍との熾烈な戦い(グレート・シージ)を勝ち抜いた聖ヨハネ騎士団。その当時の彼らの本拠が、首都ヴァレッタから入り江を挟んで対岸にある聖アンジェロ城砦(下の画像)だった。

マルタの首都ヴァレッタから眺めた聖アンジェロ城砦

ところが、オスマン・トルコ軍との死闘から既に長い歳月が流れていた。かつてはキリスト教の戦士集団だった聖ヨハネ騎士団もすっかり変質し、ナポレオン艦隊に対してなんらの抵抗をすることもなく、マルタ島を明け渡してしまったんだ。余談ながら、拠点を失った聖ヨハネ騎士団は、西暦1834年からイタリアの首都ローマにあるコンドッティ通り(スペイン階段近く)に本部を置いている。

ナポレオンのエジプト遠征

地中海の要衝マルタ島をなんなく占領したナポレオン艦隊は、やがてエジプトに到着。「ピラミッドの上から4000年の歴史が諸君を見下ろしている」と兵士たちを鼓舞したナポレオンは、敵をあっさりと撃ち破り、やがてカイロに入城した。

余談ながら、このナポレオンのエジプト遠征に参加した将兵の中には、後に小説「三銃士」を著した作家アレクサンドル・デュマ・ペールの父親トマもいた。そのトマはナポレオンに対してエジプト遠征の批判を行い、フランスに送還されてしまった。でも、途中で難破してナポリで捕虜とされ、2年間をそこで過ごす羽目になったんだそうな。

もう一つ余談なんだけど、このナポレオンのエジプト遠征によって、古代史研究に偉大な前進がもたらされた。それがロゼッタ・ストーンの発見だった。それによってシャンポリオンによるエジプト古代文字の解読が為され、古代史の研究が大いに進んだわけだ。

イギリスの首都ロンドンの大英博物館にあるロゼッタ・ストーン

ちなみに、このロゼッタ・ストーン(上の画像)は、今はイギリスの首都ロンドン大英博物館古代エジプトのコーナーに展示されている。

ネルソン提督によるフランス艦隊撃滅

地元民の反乱も鎮圧し、オスマン・トルコが派遣した軍をも撃ち破ったナポレオンのエジプト遠征は大成功となるかと思えた。でも、イギリスは海軍力においてはるかに勝っていた。西暦1798年8月にはネルソン提督指揮下のイギリス艦隊が、アレクサンドリアの沖合いでフランス艦隊を撃滅している。

イギリスの首都ロンドンのセント・ポール大聖堂の地下墓地にあるネルソン提督の像

そのイギリス艦隊の指揮官ネルソン提督の像が上の画像なんだけど、ロンドンのセント・ポール大聖堂の地下墓地で見たもの。そこにはネルソン提督のお墓があるんだ。ついでながら、ロンドンのトラファルガー広場には高さ51メートルの円柱が立っているんだけど、その上にもネルソン提督の像が立てられている。

帰国したナポレオンが統領政府を樹立

艦隊を失い、エジプトに孤立することとなったナポレオン。他方で本国フランスでは総裁政府が統治能力の無さを露呈していた。意を決したナポレオンは、軍をエジプトに残し(置き去りにしてというべきかな)、西暦1799年10月にフランスの首都パリに帰還したんだ。

帰国したナポレオンは、彼と同じくクーデターを企んでいたシェイエスと手を組んだ。総裁政府の重鎮の一人だったシェイエスは、西暦1799年11月には議会を説得し、ナポレオンをパリ駐屯軍の司令官に任命させている。

そしてナポレオンを第一統領とする統領政府が成立したわけだ。これをフランス革命暦の日付にちなんで、「ブリュメール18日のクーデター」というらしいよ。ちなみに、この統領政府の第一統領の公邸は、パリのテュイルリー宮殿(今はテュイルリー庭園のみが残る)だった。ナポレオンは皇帝になった後もそこに住んでいたけどね。

余談ながら、ナポレオンと手を組んだはずのシェイエスは、統領政府を構成する三人の統領の一人にもなれなかった。軍人ナポレオンをうまく丸めこんだつもりが、逆に上手く利用されちゃったみたい。ナポレオンもなかなかのタヌキだったんだね。そして、そのナポレオンの物語はまだまだ続いていくんだ。

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