ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦1436年、宗教画家フラ・アンジェリコがフィレンツェのサン・マルコ修道院でフレスコ画を描き始めた。(イタリア)


フィレンツェのサン・マルコ修道院にやって来たフラ・アンジェリコ

西暦1436年、イタリアの古都フィレンツェにあるサン・マルコ修道院に一人のドミニコ派の修道士が赴任して来た。それがこのページの主役であるフラ・アンジェリコだった。(今はサン・マルコ美術館となっている。下の画像はその中庭の回廊なんだけど、今も修道院の面影があるよね。)

イタリアの古都フィレンツェにあるサン・マルコ美術館(かつての修道院)

このフラ・アンジェリコは西暦1395年(あるいは1390年)にフィレンツェの北にある村で生まれたらしい。詳しいことはわかっていないんだけど、西暦1417年には画家となっていたとの記録があるんだそうな。

そんなフラ・アンジェリコは修道士になる前から各地にあるドミニコ派の修道院や教会でフレスコ画の制作に携わっていたらしい。その後、遅くとも西暦1423年にはドミニコ派の修道士になっていた。そして西暦1435年にフィレンツェのサン・マルコ修道院をドミニコ派が運営することになり、その翌年にフラ・アンジェリコが派遣されてきて、フレスコ画を描き始めたわけだね。

フィレンツェの国父コジモ・デ・メディチの支援

当時のフィレンツェは、名門メディチ家の当主である国父コジモ・デ・メディチが実質的に支配していた。彼は何人もの芸術家を支援し、イタリア・ルネサンスの庇護者の一人となっていた。例えば彫刻家ドナテッロバルジェッロ博物館に名高いダヴィデ像がある)や建築家ブルネレスキ(フィレンツェの大聖堂のクーポラを完成させた)などが彼の支援を受けていた。

イタリアの古都フィレンツェにあるサン・マルコ美術館(かつての修道院)にあるフラ・アンジェリコの「受胎告知」

そんな国父コジモ・デ・メディチがフラ・アンジェリコを支援し、サン・マルコ修道院にいくつものフレスコ画を描かせたらしい。例えば上の画像は西暦1446年頃に完成されたと言われている「受胎告知」。今のサン・マルコ美術館で見ることが出来るんだ。もちろん、同美術館では他にもいくつもの彼のフレスコ画を見ることが出来るんだけどね。

ローマ教皇に呼び寄せられたフラ・アンジェリコ

でも、サン・マルコ修道院でいくつものフレスコ画を描いたフラ・アンジェリコの名声はローマ教皇の耳にも届いていた。そして西暦1445年、教皇エウゲニウス4世は彼をローマに呼び寄せたんだ。ヴァティカンのサン・ピエトロ大聖堂の中の礼拝堂にフレスコ画を描く為だったそうな。(下の画像は今のサン・ピエトロ大聖堂。)

イタリアの首都ローマのヴァティカンにあるサン・ピエトロ大聖堂を遠望

その後、フラ・アンジェリコがフィレンツェのサン・マルコ修道院に戻ることは無かった。ローマで制作をいった後にはフィエーゾレの修道院長となり、やがて再びローマに呼び寄せられている。そして西暦1455年にローマの修道院で亡くなったんだそうな。

福者(ベアート)アンジェリコ

フラ・アンジェリコは時にはベアート・アンジェリコとも呼ばれていたらしい。ベアートとは「福者」を意味する言葉なんだそうな。でも、彼は実際にはローマ教会によって福者とされたわけではなかった。

ところが、西暦1982年にローマ教皇ヨハネ・パウロ2世はフラ・アンジェリコを福者としたんだ。亡くなってから500年以上も経ってから福者になるなんて、天国のフラ・・・じゃなくて、福者アンジェリコも驚いたかもしれないね。

ついでといっちゃ失礼なんだけど、このローマ教皇ヨハネ・パウロ2世は西暦1992年にガリレオ・ガリレイに謝罪している。地動説を説いたことで彼が裁判にかけられたことが不適切だったというわけだ。ガリレオは西暦1642年に亡くなっているから、それから350年を経ての謝罪だね。

長崎の大浦天主堂にあるローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の胸像

上の画像はそんなローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の胸像なんだけど、長崎の大浦天主堂にある。教皇は西暦1981年に来日し、広島と長崎を訪れて平和を訴えている。

そんな教皇はフラ・アンジェリコの描いたフレスコ画のみならず、彼の人格をも讃えている。修道士でありながら絵のモデルとなった修道女と駆け落ちをしたフィリッポ・リッピとは大違いということなんだろうね。

次のページ



姉妹サイト ヨーロッパ三昧

ヨーロッパ三昧

このサイト「ヨーロッパの歴史風景」の本館が「ヨーロッパ三昧」です。イギリス・フランス・イタリア・スペイン・ギリシャ・トルコ・エジプト・ロシア・アゼルバイジャンなど25国45編の旅行記を掲載しています。こちらも遊びに行ってみてくださいね。

「ヨーロッパ三昧」のトップ・ページのURLは、 http://www.europe-z.com/ です。

Copyright (c) 2002-2014 Tadaaki Kikuyama
All rights reserved
管理・運営 あちこち三昧株式会社
このサイトの画像 及び 文章などの複写・転用はご遠慮ください。