ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦1456年、イタリアの修道士にしてルネサンスを代表する画家のフィリッポ・リッピが修道女と駆け落ちした。


修道士にしてルネサンスの画家フィリッポ・リッピの誕生

西暦1406年、イタリアの古都フィレンツェのお肉屋さんに男の子が生まれた。間もなく両親が亡くなり、男の子はしばらくおばさんに育てられた。でも、やがて彼は修道院に引き取られ、そこで成長したんだそうな。

イタリアの古都フィレンツェのパラティナ美術館にある画家フィリッポ・リッピの「聖母子と聖アンナの生涯の物語」

ところが、彼は修道士としての勉強はそっちのけで絵を描いてばかりいた。そんな少年の絵の才能を認めた修道院長は彼が絵を学ぶことを認めたらしい。修道士にしてイタリア・ルネサンスの画家フィリッポ・リッピはそうして誕生したわけだ。(上の画像はフィレンツェのパラティナ美術館にあるフィリッポ・リッピの絵「聖母子と聖アンナの生涯の物語」。西暦1450年頃の作品らしい。)

修道士フィリッポ・リッピと修道女との駆け落ち

若くして画家として注目を集めたフィリッポ・リッピなんだけど、しかし修道士でもあった。そして西暦1456年、修道士フィリッポ・リッピは女子修道院付属礼拝所の司祭となった。そこで祭壇画を描く役目を与えられたんだそうな。

その祭壇画に描く聖母マリアのモデルとして彼が選んだのが、修道女ルクレツィア・ブーティだった。でも、彼はその19歳の修道女と恋に落ち、二人で駆け落ちをしてしまった。

そんなとんでもないことをしでかした修道士をローマの教皇は許してはおけないよね。というわけで、修道士フィリッポ・リッピは教会から破門されてしまったそうな。

そんな画家フィリッポ・リッピに救いの手を差し伸べたのが、フィレンツェの国父と呼ばれたコシモ・デ・メディチだった。国父コシモ・デ・メディチは教皇にとりなし、修道士フィリッポ・リッピの破門を解いてもらった。更には彼と修道女ルクレツィアの二人を僧籍から還俗させ、結婚までさせてやった。

ついでながら、子供の頃から修道院で育てられた修道士フィリッポ・リッピなんだけど、若い頃から何度も女性問題を起こしていたとか。そんな問題児を女子修道院の付属礼拝所の司祭にしたことがそもそもの間違いだったようにも思えるよね。虎に翼を与えて野に放ったようなもんだよね。

ルネサンスの画家フィリッポ・リッピ

フィレンツェの名門メディチ家の当主である国父コシモの助けを得て修道女ルクレツィアと結婚したフィリッポ・リッピは、イタリア・ルネサンスの歴史に残る作品を描き続けた。

イタリアの古都フィレンツェのウフィツィ美術館にある画家フィリッポ・リッピの「聖母子と天使」

例えば下の作品はフィレンツェのウフィツィ美術館にある「聖母子と天使」は、西暦1460年頃の作品とされている。ちなみに、この絵に描かれた聖母マリアのモデルは駆け落ちをした修道女ルクレツィアだったとも言われているんだ。

そんな画家フィリッポ・リッピとルクレツィアとの間には、やはり画家となったフィリッピーノ・リッピも生まれたんだそうな。

画家フィリッポ・リッピとボッティチェッリ

イタリア・ルネサンスの中でもフィレンツェ派としていくつもの作品を残した画家フィリッポ・リッピなんだけど、彼は他にも偉大な貢献を残している。それがルネサンスを代表する画家ボッティチェッリだった。修行時代のボッティチェッリは、フィリッポ・リッピの下で絵を学んだらしい。(下の画像はウフィツィ美術館にあるボッティチェッリの「ヴィーナス誕生(部分)」。)

イタリアの古都フィレンツェのウフィツィ美術館にある画家ボッティチェッリの「ヴィーナス誕生」

そんな画家フィリッポ・リッピは西暦1469年に亡くなる。そして彼の息子のフィリッピーノ・リッピは、ボッティチェッリの下で画家として修行を積んだらしい。ボッティチェッリとフィリッピーノ・リッピはその後も長く友人として付き合いを続けたんだそうな。

ついでながら、同様に修道士にして画家だったのがフラ・アンジェリコだね。彼の作品はフィレンツェのサン・マルコ美術館(昔の修道院)で見ることができる。そのフラ・アンジェルコは、修道女と駆け落ちをするどころか、人格的にも讃えられるような人物だった。そんな彼は西暦1982年にローマ教皇ヨハネ・パウロ2世によって福者とされている。破門されたフィリッポ・リッピとは対照的な芸術家だったんだね。

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