ヨーロッパの歴史風景 近世編




西暦1769年、イタリアの古都フィレンツェのウフィツィ美術館が一般に公開された。


イタリアの古都フィレンツェでも人気の高いウフィツィ美術館

イタリアを訪れる観光客に最も人気の高い街といえば首都ローマか、あるいは古都フィレンツェだろうか。そんなフィレンツェで多くの人々を集めるのが、大聖堂(ドゥオモ)であり、ウフィツィ美術館かな。

イタリアの古都フィレンツェのウフィツィ美術館の前の行列

上の画像はフィレンツェのウフィツィ美術館の前に並ぶ人々の行列の様子なんだけど、ここで1時間あるいは2時間ほど待つのは当たり前。運が悪ければ数時間も待たされることもあるらしい。出来れば事前にウェブで予約しておきたいよね。(旅行業者さんでも予約を手配してくれる。)

そもそもはオフィスとして建てられたウフィツィ美術館

そんな人気の高い観光スポットであるウフィツィ美術館なんだけど、「ウフィツィ」というイタリア語の言葉は英語で言えば「オフィス」に当たるんだそうな。つまりは事務所であり役所だよね。それもそのはずで、メディチ家のフィレンツェ大公コシモ1世の命によって役所として西暦1560年に建設が始まったのが、今のウフィツィ美術館の建物だったそうな。

但し、この建物が西暦1580年に完成した時には、トスカナ大公コシモ1世は既に亡くなっていたらしい。ついでながら、この建物の設計を行ったヴァザーリもその時点では亡くなっていたんだそうな。(ヴァザーリはフィレンツェを流れるアルノ川にかかるヴェッキオ橋の上のヴァザーリの廊下を築いたことでも名高い。)

イタリアの古都フィレンツェのウフィツィ美術館に見るボッティチェッリの「春(プリマヴェーラ)」

その後もこのウフィツィ美術館の建物はメディチ家の代々のトスカナ大公のオフィスとして使われていったんだ。(上の画像はメディチ家と縁の深いルネサンスの画家ボッティチェッリの「春(プリマヴェーラ)」なんだけど、この作品もウフィツィ美術館で見ることが出来る。)

メディチ家の断絶とウフィツィ美術館の一般公開

ところで、フィレンツェのウフィツィ美術館で下の画像の肖像画を見ることが出来る。この人物は16世紀前半のイタリアで傭兵隊長として名高い「黒備えのジョヴァンニ」なんだけど、メディチ家の傍系(ジョヴァンニ・ディ・ビッチの次男、すなわち国父コジモの弟のロレンツォの子孫)の出身の彼の息子が初代トスカナ大公コシモ1世となり、その子孫がトスカナ大公位を継承していったわけだ。

イタリアの古都フィレンツェのウフィツィ美術館に見るジャン・パオロ・パーチェの「黒備えのジョヴァンニ」

ところが、そのメディチ家の最後のトスカナ大公ジャン・ガストーネは後継者を残すことなく西暦1737年に亡くなってしまった。彼の姉のアンナ・マリーア・ルイーズ・デ・メディチはその6年後に亡くなり、メディチ家嫡流は断絶してしまったんだ。

その後のトスカナ大公位はハプスブルク・ロレーヌ家によって継承された。でも、アンナ・マリーア・ルイーズ・デ・メディチは亡くなる前にメディチ家が所有していた美術品などをトスカナ大公国に譲渡していた。但し、それらの美術品がフィレンツェにおいて一般公開されることが条件だったそうな。

ウフィツィ美術館が一般に公開され、メディチ家の美術品を人々が見ることが出来るようになったのは、それから26年後の西暦1769年のことだった。西暦1753年に設立されたロンドン大英博物館には遅れたものの、西暦1787年に設立されたナポリ国立考古学博物館、西暦1793年に公開されたパリルーブル美術館には先行している。

ウフィツィ美術館に続いてパラティナ美術館

ウフィツィ美術館の一般公開から64年後の西暦1833年のことなんだけど、同じくフィレンツェにあるピッティ宮殿の中のパラティナ美術館が公開された。トスカナ大公の私的な宮殿となっていたピッティ宮殿にも多くの美術品のコレクションがあった。パラティナ美術館の公開によって、そんな多くの美術品を人々が見ることができるようになったわけだ。

イタリアの古都フィレンツェのパラティナ美術館に見るラファエロの「小椅子の聖母」

そんなパラティナ美術館のコレクションの中には、ラファエロの「小椅子の聖母」(上の画像)もある。ウフィツィ美術館を見たら、ちょいとヴェッキオ橋を渡ってピッティ宮殿まで足を伸ばし、その中にあるパラティナ美術館にも入らないともったいないよね。

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