ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦1353年、中世イタリアの塔の街サン・ジミニャーノがフィレンツェに従属した。


中世イタリアの塔の街サン・ジミニャーノ

フランス、更にはイギリスからローマに赴く巡礼たちが歩いたフランチジェーナ街道の重要な中継地となっていたサン・ジミニャーノは、西暦1199年に自治都市として独立し、繁栄の道を歩んだらしい。

中世イタリアの塔の街サン・ジミニャーノの風景

そんな中世イタリアの街サン・ジミニャーノでは、貴族たち(冨を蓄えて周囲の土地を買い取って貴族化した商人たち)が競って高い塔を建てていた。一時期には 70本を越える塔が林立していたらしい。そんな中世の塔が今も 14本が立ち並ぶサン・ジミニャーノの街の様子が上の画像なんだ。

中世イタリアの塔の街として名高いサン・ジミニャーノなんだけど、いくつもの塔が林立していたのは他にもあったらしい。例えば同じく街道の街とされるボローニャには 100本を越える塔があったんだそうな。ところが、その多くが取り壊されてしまい、中世の塔の街と呼ばれることはないよね。中世イタリアの塔の街といえば、やはりサン・ジミニャーノだよね。

サン・ジミニャーノのドゥオモ

そんなサン・ジミニャーノの街の中心の一つが下の画像にあるドゥオモ(聖母被昇天教会)かな。西暦1148年の建物というから、街が自治都市となる前からここにあったわけだね。

中世イタリアの塔の街サン・ジミニャーノにあるドゥオモ(聖母被昇天教会)

この教会は、聖ジミニャーノに捧げられたらしい。聖ジミニャーノは4世紀のモデナの司教だったけど、この街で亡くなったとされている。故にこの街はサン・ジミニャーノ(聖ジミニャーノ)と呼ばれるようになったんだそうな。

この聖ジミニャーノは中世イタリアで、特にトスカナ地方で崇められた聖人なんだけど、このサン・ジミニャーノの街は聖人ゆかりの土地として巡礼たちが集まり、このドゥオモにやって来たんだそうな。

そんなわけで、フランチジェーナ街道を歩く旅人や巡礼たちが集まり、自治都市サン・ジミニャーノが繁栄したわけだ。更には特産品のサフランや白ワインのヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノの取引も街の繁栄に貢献したらしい。

サン・ジミニャーノのチステルナ広場

サン・ジミニャーノの街のもう一つの中心が、下の画像にあるチステルナ(井戸)広場かな。広場の中心にある井戸は13世紀に掘られたものなんだそうな。

中世イタリアの塔の街サン・ジミニャーノにあるチステルナ(井戸)広場

上の画像にも見えているけど、このチステルナ広場のすぐ近くにも中世の塔がそびえているんだ。また広場の周囲の建物のほとんどが12世紀から13世紀のものなんだそうな。中世の塔の街サン・ジミニャーノの最盛期を物語る場所なんだろうね。

フィレンツェに従属したサン・ジミニャーノ

そんなサン・ジミニャーノの街では、皇帝派と教皇派とが激しく対立していた。加えて貴族たちは互いに争っていたらしい。彼らは塔の高さをも競っていたんだそうな。

そして西暦1347年、フランス南部プロヴァンス地方港町マルセイユ黒死病(ペスト)が上陸した。その翌年には黒死病はイタリアでも流行し、サン・ジミニャーノの街は人口の半分を失ったんだそうな。自治都市サン・ジミニャーノは衰退し、フィレンツェに従属したのは数年後の西暦1353年のことだった。

中世イタリアでフィレンツェのライバルだったシエナの歴史地区に残る城壁

トスカナの覇権を目指すフィレンツェは、支配下に置いたサン・ジミニャーノをライバルだったシエナに対する前進基地としたらしい。そんなシエナがフィレンツェに征服されたのは西暦1555年のことだった。(上の画像は世界遺産ともなっているシエナ歴史地区に残る中世の城壁。)

他方のサン・ジミニャーノは前進基地として役割さえも失い、更に衰退していった。新たな建物を建てる必要も生じず、故に古くなり無用の長物となった塔を取り壊す必要も無かった。そもそも塔の解体の為の費用負担にも耐えられなくなっていたらしい。でも、その沈滞のおかげで私たちは中世イタリアの塔の街サン・ジミニャーノを歩くことが出来るんだけどね。

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