ヨーロッパの歴史風景 先史・古代編




紀元前 616年、イタリアにおいてエトルリア人が古代ローマの王となった。


古代ローマの王となったエトルリア人

世界史の授業の中で最初のハイライトと言えば古代ローマ帝国かな。エトルリア人の王によって支配されていた古代ローマが王を追放して民主制を樹立し、やがては地中海を制覇していくというわけだね。

やがて消えていく古代エトルリア人は気の毒な役回りを演じているよね。まるで鎌倉幕府を打ち立てた源氏に対して、「おごる平氏は久しからず」と言われた平家みたいだよね。

ところが、古代エトルリア人はギリシャなどの東方の文化を取り入れ、都市国家を建設し、鉱山を開発して青銅器や鉄器を生産し、イタリアに最初の文化の華を咲かせた人々だったんだ。

イタリアの首都ローマのフォロ・ロマーノの中心カピトリーノの丘の眺め

上の画像はイタリアの首都ローマの中でも人気の観光地フォロ・ロマーノの中心カピトリーノの丘の眺めなんだけど、古代においてはこの丘の周囲も湿地だった。その湿地を開発して発展の基礎をなしたのが、紀元前616年に古代ローマの王を出したエトルリアの人々だった。

後にはこのフォロ・ロマーノに巨大なコロッセオ(円形闘技場)を建設し、フランス南部プロヴァンス地方などに水道橋ポン・デュ・ガールを残すなどの高い建築技術を誇った古代ローマだったけど、その最初の先生がエトルリア人だったわけだね。

イタリアの西にはエトルリア人の海

話は古代ローマが栄える前の時代に遡る。当時の古代ギリシャ人はエトルリア人たちのことをティレノイと呼んでいた。そのティレノイの人々の海がティレニア海、つまりイタリアの西に広がる海のことだよね。

イタリアとティレニア海の略図

この古代エトルリア人の社会は、今のフィレンツェピサを流れるアルノ川からローマを流れるティベレ川の間の地域を中心に発展していった。フィレンツェもそうだけど、シエナサン・ジミニャーノも古代エトルリア人の街が起源だとも言われている。

やがてエトルリアはカルタゴと同盟を結び、貿易を盛んに行い、ローマのみならず、その南に広がるカンパーニャ地方にも勢力を広げていった。エトルリア人は北に向かっても勢力を拡大していった。ヨーロッパ最古の大学で名高いイタリアの街道の街ボローニャも、紀元前534年頃にエトルリア人が築いた街フェルシナから発展したとされているそうな。

古代ギリシャの影響を受けたエトルリアの文化

海上交易を盛んに行っていたエトルリアの文化には、古代ギリシャの影響が大きく見られるらしい。古代ギリシャの陶器を輸入し、あるいはギリシャの人々をイタリアに移住させてギリシャ風の陶器を作らせていたそうな。

そんなわけで、エトルリア人は元々は東方(例えば今のトルコの小アジア)からイタリアに移り住んだ民族であるとする説もあったらしい。今ではイタリアの土着の民族だとされているみたいだけどね。

イギリスの首都ロンドンの大英博物館で見た古代エトルリアの出土品

但し、古代エトルリアの人々がひたすらギリシャの文化を輸入していたわけではなかった。他にもエジプトなどの影響も見られる。更にはエトルリア独自の文物をも発展させている。(上の画像はイギリスの首都ロンドン大英博物館で見た古代エトルリアの出土品。)

エトルリアに興味があればローマのヴィラ・ジュリア博物館

そんな古代エトルリアの文化に興味があるならば、是非とも見に行きたいのがローマのボルゲーゼ公園の一画にあるヴィラ・ジュリア博物館(下の画像)だね。なんといってもエトルリア関連の展示が充実しているし、近くにはイタリア・バロックの彫刻家ベルニーニの彫刻が自慢のボルゲーゼ美術館もあるからね。

イタリアの首都ローマのボルゲーゼ公園の一画にあるヴィラ・ジュリア博物館

ついでながら、ローマのヴァティカン美術館・博物館の中には、グレゴリウス・エトルリア美術館もある。でも、私が行った時には中に入ることが出来なかったんだ。というわけで、そこにどの程度のエトルリア関連の展示があるのか、よく知らないんだけどね。

いずれにせよ、長く謎の民族とされてきたエトルリア人なんだけど、独自の文化といい古代ローマとの関係といい、これからも機会があればもっと色々と調べてみたいね。

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