ヨーロッパの歴史風景 先史・古代編




紀元前 753年、伝説によれば、ロムルスとレムスという双子の兄弟が築いた街がローマと名づけられた。(イタリア)


伝説の中でのローマの誕生

このサイトのタイトルは「ヨーロッパの歴史風景」となっている。というわけで、基本的には歴史的な事実とそれに関連する風景を中心として構成したいと考えているわけだ。

でも、時としてその歴史に大きな影響を与えたと思われる宗教的なことも採り上げている。あるいは何らかの意味で歴史的な事実を反映しているかもしれないと考えられる伝説にもページを割くこともある。

実はまさにこのページがそれ。イタリアの首都ローマの誕生については、必ずしも全てが明らかになっているわけじゃない。というわけで、このページでは、古代ローマの誕生について、伝説を中心として書こうというわけだ。

イタリアの首都ローマのフォロ・ロマーノの聖なる道から眺めたカピトリーノの丘

ちなみに、上の画像は古代ローマの多くの遺跡が残るフォロ・ロマーノの聖なる道から眺めたカピトリーノの丘なんだけど、ここもローマ誕生の伝説の舞台の一つなんだね。

ギリシャに敗れたトロイの人々とイタリア

まずは古代ギリシャの神話から始まる。トロイに攻め込んだものの堅い守りを撃ち破れなかったギリシャ軍は、城壁の前に大きな木馬を置いて兵を引いた。トロイの人々はその木馬を戦利品として城内に運び込んだ。

でも、その木馬がギリシャ軍の策略だと見抜いたのがラオコーンだった。でも、アテナ女神がヘビを使ってラオコーンと二人の子供を殺したことにより、ギリシャ軍の策略は成功したわけだ。

イタリアの首都ローマのヴァティカン美術館のピオ・クレメンティーノ美術館で見た古代彫刻ラオコーン

上の画像はアテナ女神の命を受けたヘビに絞め殺されるラオコーンと二人の子供の様子を描いた古代彫刻。ローマのヴァティカン美術館・博物館の中にあるピオ・クレメンティーノ美術館の中で見ることが出来る。ついでながら、イタリア南部にある世界遺産パエストゥムにはアテナ女神の神殿も残されているね。

結局、木馬は城内に運び込まれ、ギリシャ軍の策略は成功し、トロイは敗れた。その敗れたトロイの人々の中にアエネアスという若者がいた。アエネアスはトロイを出て各地を放浪し、やがてイタリアにやってきた。そのイタリアでラティヌスの王女と結婚したんだそうな。

狼に育てられた双子の兄弟 ロムルスとレムス

トロイから流れてきたアエネアスとラティヌスの王女との間に生まれたアスカニウスは、新しい街アルバ・ロンガを築き、その地の王となった。その8代目の子孫ヌミトルとアムリウスの兄弟が王となった。でも、弟アムリウスは兄ヌミトルを追放してしまった。

追放された王ヌミトルの王女は巫女として女神に仕えていた。が、やがて軍神マルスとの間に双子の兄弟が生まれた。復讐を怖れた王アムリウスは双子の赤ん坊を小舟に乗せて川に流したらしい。

イタリアのトスカナ地方の街シエナで見た狼育てられたロムルスとレムスの双子の像

やがて小舟は川岸に乗り上げた。そこに牝狼が姿を見せた。双子の赤ん坊に乳を飲ませて育てたのは、その牝狼だったとか。その双子こそがローマ誕生の伝説に欠かせないロムルスとレムスの兄弟だった。(上の画像はシエナで見た牝狼と双子の赤ん坊の像。同様の像がイタリアのあちこちにあるよね。)

ロムルスとレムスが築いた街はローマと名づけられた

狼に育てられて成長した双子の兄弟ロムルスとレムスは、やがてアルバ・ロンガの街に向かった。二人の祖父ヌミトルを追放した王アムリウスを殺し、復讐を遂げたそうな。

追放されていた祖父ヌミトルをアルバ・ロンガの王に復帰させた双子は、再び旅に出た。やがてティベレ川のほとり落ち着き、そこに街を築いたんだそうな。その新しい街に二人のどちらの名をつけるか。双子は兄弟喧嘩を始めた。

イタリアの首都ローマのフォロ・ロマーノにあるパラティーノの丘

結局、より多くの鳥を見た方を勝ちとすることになり、パラティーノの丘(上の画像)の上に登ったロムルスが勝ちを得た。その結果、ティベレ川のほとりに築かれた新しい街は、ロムルスの名に基づいてローマと名づけられたんだそうな。伝説によれば、それが紀元前753年のことだったとか。

争いに敗れて新しい街に自分の名をつけることができなかったレムスは、八つ当たりをして街の城壁を壊してしまった。その為にレムスはロムルスによって殺されてしまったそうな。

というのが、イタリアの首都、古代ローマ帝国の都、永遠の都ローマの誕生についての伝説の要約なんだ。この伝説がどこまで歴史的な事実を反映しているのか、あるいは全く反映していないのか、わからないんだけどね。

余談ながら、マキャベリは「君主論」において、レムスを殺したロムルスについて、私利私欲ではなく社会の為に残虐な行為を行ったものであって、犯した罪は許されるとしているらしい。

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