ヨーロッパの歴史風景 先史・古代編




紀元前 747年、ヌビア人のピアンキが王となった。やがて彼は古代エジプトに第25王朝を開いた。


ヌビア人の王ピアンキ

紀元前8世紀前半、古代エジプトにはいくつもの王朝が並び立ち、分裂状態にあった。他方でエジプト南部から今のスーダンにかけては、ヌビア人の王朝の支配下にあった。そのヌビア人の王朝において、紀元前747年に父王の王位を継承したのがピアンキ(あるいはピイ)だった。

アスワンのレストランで見たヌビア人のダンス(エジプト)

彼の支配下にあったヌビア人は、エジプト北部の人々とは異なる言葉と風習を持ち、より黒い肌を持つ人々だった。(上の画像はアスワンのレストランで見たヌビア人のダンス。)

エジプトを征服したピアンキ

ピアンキを王に戴くヌビア人の王朝はエジプト南部に領土を持つエジプト人の領主をも支配下に置いていた。そんなエジプト人の領主が敵の攻撃を受け、ピアンキに援軍を求めて来たらしい。ピアンキはヌビア人の兵を率いて北へと向かった。

ルクソール神殿の塔門と2体のラムセス2世の像(エジプト)

進軍の途中、ピアンキはテーベ(今のルクソール)にあるルクソール神殿(その塔門が上の画像)でオペト祭りに参列したらしい。エジプトにおけるアメン神信仰の中心はカルナック神殿なんだけど、ナイル川の氾濫の時期にはアメン神はルクソール神殿を訪れる。その際に豊穣を祈って行われるのがオペト祭りなんだそうな。

更に北へと軍を進めたピアンキは、下エジプト(ナイル川の下流地域)に分立する君主たちを討ち破り、古都メンフィスなどを征服していった。かくして全土を支配するに至ったピアンキは、古代エジプト第25王朝を開き、その初代となったわけだ。

ピアンキの死去

上下エジプトの統一を回復したピアンキは、紀元前722年に亡くなったと考えられる。彼はヌビア人の土地、今のスーダン北部に葬られた。その地には彼の為のピラミッドも建設された。今は崩壊が進んでいるけど。

イギリスの首都ロンドンの大英博物館で見た古代エジプト第25王朝時代のカノポス壺

ちなみに、イギリスの首都ロンドン大英博物館には、彼が創始した第25王朝の頃のカノポス壺が展示されている。それが上の画像なんだ。ちょっと見には可愛い壺なんだけど、実はミイラを作るために遺体から取り出した内臓を入れるためのもの。それぞれの壺の蓋は、ホルス神の4人の息子たちを象っているらしい。画像の左から順番に説明すると、

  • 人間の頭を持つイセムティは、肝臓の守護神。
  • 隼の頭を持つケベセヌエクは、腸の守護神。
  • ジャッカルの頭を持つドゥアムテフは、胃の守護神。
  • ヒヒの頭を持つハピは、肺の守護神。
それぞれの守護神にミイラとなった死者の内臓を預け、死者が蘇る日まで守ってもらおうということなんだろうね。

エジプトを失った第25王朝

ピアンキの死後も彼が開いた第25王朝は古代エジプトを支配し続けた。そんな彼らの建築物も残されている。ピアンキの息子で第3代の王となったタハルカは、アメン神の信仰の中心であるカルナック神殿の列柱室(下の画像)の修復を行ったんだそうな。

カルナック神殿の列柱室(エジプト)

しかし、彼らの支配がいつまでも続いたわけじゃない。ピアンキの弟で第2代の王シャバカの頃にはアッシリアがシリアにおいて勢いを増しつつあった。そして第3代タハルカはエジプトに攻め込んできたアッシリア軍に敗れている。やがてエジプト全土がアッシリアの支配下に落ちてしまった。

第25王朝の第4代タヌトアメン王は紀元前656年に亡くなっている。以後も彼の継承者はヌビア人の土地を支配し続けたけれども、エジプトを回復することはできなかったらしい。

現代のエジプトとヌビア人

そして現代のエジプトにもヌビア人は住んでいる。でも、大多数のエジプト人と比べて黒い肌を持つヌビア人は、差別される存在なんだそうな。しかも、アスワン・ハイ・ダムの完成によって、ヌビア人の住むナイル川のほとりの村の多くが水没し、彼らはカイロやアレクサンドリアなどの都会に移住を余儀なくされたんだそうな。

そんなヌビア人に関して興味深いニュースを目にしたのが西暦2014年2月のこと。新しく可決されたエジプトの新憲法には、ヌビア人をその故郷に戻すという規定があるらしい。とはいえ、ダムによって水没した村々に代わる別の居住地を開発することが必要になるんだけどね。はてさて、ヌビア人が父祖の地に戻る日が来るんだろうか。

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