ヨーロッパの歴史風景 近世編




西暦1656年、イタリア・バロック美術の巨匠ベルニーニがローマのサン・ピエトロ広場の建設を始めた。


ローマのサン・ピエトロ大聖堂前の広場に集まる多くの人々

ある年の6月、イタリアの首都ローマのホテルに泊まっていた私は、地元のテレビの画面を見て驚いた。そこに映し出されていたのは、ヴァティカンのサン・ピエトロ大聖堂の前のサン・ピエトロ広場に集まったとんでもなく多くの人々(下の画像)だった。

イタリアの首都ローマのヴァティカンにあるサン・ピエトロ大聖堂の前の広場に集まった多くの人々

何事が起こったのかと思えば、20世紀のイタリアの奇跡の人 パドレ・ピオ(ピオ神父)が聖人の列に加えられるというので、そのためのミサに人々が集まっていたということらしい。なるほど、こんなことがあるからサン・ピエトロ大聖堂の前には大きな広場が必要なんだね。

その翌日のことなんだけど、ローマから鉄道で南に向かうことにしていた私はホテルでタクシーを呼んでもらおうとした。ところが、そのタクシーを呼ぶことが難しいとのこと。それも上の画像で見たパドレ・ピオの列聖の余波なんだそうな。やむなく私は白タクに乗って駅に向かい、なんとか予定の列車に間に合ったんだけどね。

イタリア・バロックの巨匠ベルニーニによるサン・ピエトロ広場

それから数日が経ち、ローマに戻ってきた私が歩いた時のサン・ピエトロ大聖堂の前の広場の様子が下の画像なんだ。歩く人影もまばらなんだけど、数日前のあの大混雑の様子を思えば、このサン・ピエトロ広場も無駄ではないと納得だよね。

イタリアの首都ローマのヴァティカンにあるサン・ピエトロ大聖堂の前のベルニーニが建設したサン・ピエトロ広場

西暦1656年、ローマ教皇アレクサンデル7世によって大聖堂前のサン・ピエトロ広場を整備するようにとの指示が出された。それを受けて広場を設計したのが、イタリア・バロックの彫刻家ベルニーニだった。彫刻から建築にまで活動範囲を広げたベルニーニに与えられた命題の一つは、「なるべく多くの人々を収容する広場を作ること」だったそうな。

サン・ピエトロ広場を取り囲むベルニーニの列柱廊

ローマ教皇の期待に応えてサン・ピエトロ広場を設計したベルニーニは、広場の左右に列柱廊を作った。下の画像は大聖堂に向かって右側の列柱廊なんだけど、左側にも同様の列柱廊があるんだ。

イタリアの首都ローマのヴァティカンにあるサン・ピエトロ大聖堂の前のベルニーニが建設したサン・ピエトロ広場と列柱廊

そんなサン・ピエトロ広場と列柱廊に関して、設計者ベルニーニの言葉が残されている 。

サン・ピエトロ広場と列柱廊に関する
設計者ベルニーニの言葉

サン・ピエトロ大聖堂は、全ての教会の母である。カトリック教徒の信仰を固める為に、異端の人々を教会に復帰させる為に、異教の人々を真の信仰に目覚めさせる為に、母のように両腕を広げて受け入れることを表現した柱廊が適している。

他方で、サン・ピエトロ広場の設計において、ベルニーニはちょっとした工夫をしているらしい。それは左右の列柱廊の高さを低く抑えることだった。その結果、中心にあるサン・ピエトロ大聖堂がより大きく見えることを期待したんだそうな。

サン・ピエトロ大聖堂の中で見るバロックの彫刻家ベルニーニ

サン・ピエトロ広場を歩き、初代ローマ教皇とされる聖ペテロの墓の上に建てられたと言われるサン・ピエトロ大聖堂の中に入る。まずは右手にあるミケランジェロのピエタに目を奪われるんだけど、大聖堂の奥に見える眺めが下の画像なんだ。

イタリアの首都ローマのヴァティカンにあるサン・ピエトロ大聖堂の中にあるベルニーニによるブロンズのバルダッキーノ(天蓋)と聖ペテロの司教座(カテドラ・ペトリ)

サン・ピエトロ大聖堂のクーポラ(円屋根)の下、聖ペテロの墓の上にあるのが、ブロンズのバルダッキーノ(天蓋)なんだ。更にその奥、後陣には「カテドラ・ペトリ(聖ペトロの司教座)」がある。どちらもイタリア・バロックの巨匠ベルニーニの作品なんだ。

ところで、サン・ピエトロ大聖堂の前のサン・ピエトロ広場をベルニーニに設計させたローマ教皇アレクサンデル7世なんだけど、彼はキージ家の出身だった。スペイン階段・スペイン広場からも歩いて行けるポポロ広場にあるサンタ・マリア・デル・ポポロ教会には、教皇の生家であるキージ家の礼拝堂があるんだけど、そこではベルニーニの彫刻「予言者ダニエル」や「ハバクク」を見ることも出来るんだ。(この教会にはイタリア・バロックの画家カラヴァッジョの絵もある。)

そんなこんなでイタリア・バロックの巨匠ベルニーニはローマをバロックの都とすることに大きな役割を発揮したわけだ。ところが、やがて新古典主義の時代が到来し、バロックやベルニーニの評価は著しく低くなってしまった。そんなベルニーニの作品があらためて見直されたのは20世紀になってからのことなんだそうな。

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