ヨーロッパの歴史風景 近代・現代編




西暦 1943年、フランスの作家サン・テグジュペリの小説「星の王子さま」がアメリカで出版された。


小説「星の王子さま」の作家サン・テグジュペリ

フランスの作家といえば誰が頭に浮かぶだろうか。映画やテレビ番組にもなった「三銃士」で名高いアレクサンドル・デュマ・ペールかな。いや、もっと多くの人に読まれたのは、小説「星の王子さま」の作家サン・テグジュペリかもしれないね。なんせ「星の王子さま」は250以上もの言語に翻訳されたらしいからね。

ユーロ導入前のフランスの50フラン紙幣(「星の王子さま」の作者サン・テグジュペリが描かれている)

上の画像は西暦2002年にユーロが導入されるまでフランスで使われていた50フラン紙幣なんだけど、この紙幣に描かれているのが作家サン・テグジュペリなんだ。そして見ればわかるだろうけど、「星の王子さま」も描かれているよね。ちなみに、この星の王子さまはサン・テグジュペリが本の挿絵として自ら描いたものなんだそうな。

フランス第2の街リヨンに生まれたサン・テグジュペリ

サン・テグジュペリは西暦1900年にフランス第2の街リヨンの伯爵家に生まれた。彼自身もやがて伯爵となっている。(下の画像はリヨンにあるサン・ジャン大聖堂。)

フランス第2の街リヨンにあるサン・ジャン大聖堂

少年の頃のサン・テグジュペリは、スイスの学校に行っていたらしい。そして芸術学校で建築を学んでいる。卒業はしなかったらしいけど。

パイロットとなったサン・テグジュペリ

そして西暦1921年、フランス陸軍に入ったサン・テグジュペリは、軽騎兵部隊に所属し、フランス東部アルザス地方に駐屯していたらしい。そこで彼は私費で飛行機の操縦を学び、やがてフランス空軍のパイロットとなったんだそうな。(下の画像は冒頭に掲げた50フラン紙幣の裏側。)

ユーロ導入前のフランスの50フラン紙幣(「星の王子さま」の作者サン・テグジュペリの飛行機が描かれている)

やがてフランス空軍を離れたサン・テグジュペリは、いくつかの職業を経験した後、航空郵便のパイロットとなり、アフリカや南米などでも飛んだらしい。やがて飛行機のパイロットとしての経験を織り込んだ作品を発表し、作家サン・テグジュペリとなったわけだ。特に西暦1931年に発表した「夜間飛行」で著名な作家の仲間入りをしたんだそうな。

ところが、西暦1935年12月、サン・テグジュペリと相方の二人はエジプトの砂漠に墜落してしまった。わずかな水と食料しかなく、幻覚を見始めた4日目、地元民に発見されて助けられたんだそうな。その経験は後に出版される小説「星の王子さま」に盛り込まれることになるわけだ。

小説「星の王子さま」とサン・テグジュペリ

西暦1939年、ナチス・ドイツによる第二次世界大戦が勃発。フランス空軍に復帰したサン・テグジュペリは、偵察機を操縦するパイロットとなった。ところが、ドイツ軍に圧倒されたフランスはドイツと講和。サン・テグジュペリはポルトガルを経てアメリカに亡命した。ニューヨークに到着したのは西暦1940年の年末だった。

そんなサン・テグジュペリがアメリカで書いたのが小説「星の王子さま」だった。その作品が完成したのが西暦1942年の後半のこと。そして西暦1943年にアメリカで「星の王子さま」がフランス語と英語で出版されたんだ。その本の挿絵には、サン・テグジュペリが自ら描いた星の王子さま(上の画像の50フラン紙幣にも描かれている)が使われたわけだ。

まさにその西暦1943年、サン・テグジュペリはアメリカ軍に同行して地中海へと向かった。イギリスの首都ロンドンに亡命していたシャルル・ド・ゴールによって組織された自由フランス軍に参加してドイツ軍と戦う為だった。とはいえ、既に43歳になっていたサン・テグジュペリは、過去の墜落事故の際の負傷の影響もあり、戦闘機に乗ることは不可能だった。

そんなサン・テグジュペリは偵察機のパイロットとなった。そして西暦1944年7月末日、彼は何度目かの偵察の為にコルシカ島の空軍基地を離陸していった。連合国軍のフランス南部上陸作戦の前にドイツ軍の動きを探ることが目的だった。でも、サン・テグジュペリは戻ってこなかった。

フランス南部プロヴァンス地方の港町マルセイユの風景

それから54年が経った西暦1998年、フランス南部プロヴァンス地方港町マルセイユ(上の画像)の南の沖合いで、漁師の網に銀のブレスレットがかかった。そのブレスレットには、サン・テグジュペリと奥さんの名前が刻まれていたらしい。その後、その付近の海底が調査され、まさにサン・テグジュペリが操縦していた偵察機の残骸の一部が発見されている。

サン・テグジュペリの偵察機がドイツ軍の戦闘機によって撃墜されたのかどうかは確認できないらしい。でも、「星の王子さま」を書いたサン・テグジュペリは、星になったに違いないよね。

スペイン内戦も取材したサン・テグジュペリ

西暦2016年7月、スペインの村でサン・テグジュペリの記者証が見つかったらしい。その記者証は西暦1937年4月に発効されたもの。彼は西暦1936年に勃発したスペイン内戦を取材するためにフランスの新聞社の記者としてスペインに滞在していたんだそうな。

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