ヨーロッパの歴史風景 近代・現代編




西暦 1808年、スペインで皇帝ナポレオン支配下のフランスからの独立戦争が始まった。


スペイン王カルロス4世とゴヤとナポレオン戦争

ナポレオンがフランスにおいて着々と権力を確立しつつあった西暦1801年から1802年頃、スペインではノンキな父さんのような王様カルロス4世が、画家のゴヤに家族の肖像を描かせていたんだ。

スペインの首都マドリッドのプラド美術館にあるゴヤの絵「カルロス4世の家族」

そして出来上がった作品が、スペインの首都マドリッドにあるプラド美術館で見ることが出来るゴヤの「カルロス4世の家族」(上の画像)だった。

民衆の暴動によって退位させられたスペイン王カルロス4世

やがて西暦1808年、フランス皇帝ナポレオン配下の将軍ミュラの率いる軍が、スペインの首都マドリッドを目指して進撃してきた。

スペインの首都マドリッドからも近いアランフェスの王宮

フランス軍に抵抗をすることも無く逃亡しようとしたスペイン王カルロス4世に対して、スペインの首都マドリッドからも近いアランフェスの人々が暴動を起こした。(上の画像はハプスブルク家のスペイン王フェリペ2世にゆかりのアランフェスの王宮。)

結局、民衆の怒りを抑えることも出来ず、カルロス4世は退位を余儀なくされ、その息子のフェルナンド7世がスペイン王として即位したんだ。

フランス皇帝ナポレオンの支配と戦ったスペイン独立戦争

ところが、スペイン支配の為に大軍を送り込んだフランス皇帝ナポレオンは納得していなかった。結局のところはブルボン家のスペイン王フェルナンド7世は退位させられ、皇帝ナポレオンの兄にしてイタリア南部ナポリの王となっていたジョゼフ・ボナパルトが、スペイン王ホセ1世として西暦1808年に即位した。

スペインの首都マドリッドのプラド美術館にあるゴヤの絵「マドリッドの1808年5月3日」

でも、スペインの民衆は皇帝ナポレオンの兄をスペイン王として受け入れようとはしなかった。首都マドリッドの人々も蜂起し、フランス軍との間でゲリラ戦が起こった。それがスペイン独立戦争の始まりだった。(上の画像はプラド美術館にあるゴヤの絵「マドリッドの1808年5月3日」。)

スペインでのゲリラ戦の始まりに対応し、イギリス軍がポルトガルに上陸し、フランス軍に対する戦いを始めた。その指揮官がアーサー・ウェルズリー、つまり後のウェリントン公だった。(ウェリントン公の騎馬像はイギリスの首都ロンドン金融街シティに立っているね。)

こうしてスペイン民衆の抵抗は、やがてフランス皇帝ナポレオンの没落に至る遠因の一つになったんだ。ちなみに、後にナポレオンの後継者たることを目指したフランス皇帝ナポレオン3世は、この西暦1808年に生まれている。

人々のその後

やがてフランス皇帝ナポレオンの勢いは弱まり、スペイン王ホセ1世は西暦1813年に退位させられ、フランスに捕われていたフェルナンド7世がスペイン王として復活したんだ。他方で、スペインの民衆の暴動によって王位を追われたのんきな父さんカルロス4世は、西暦1819年にイタリアのローマで亡くなっている。

復位したスペイン王フェルナンド7世は、西暦1812年に制定された憲法を無視し、反動的な政治を行っていた。でも、西暦1820年に反乱が起き、フェルナンド7世は革命軍によって捕われてしまった。そして西暦1823年にはフランス軍が介入し、フェルナンド7世は再び支配者として復活している。スペインの混乱はその後も続くんだけどね。

そんな混乱を逃れる為、西暦1824年には画家ゴヤはスペインを出てフランスに亡命し、西暦1828年にはボルドーで亡くなっている。82歳だった。

皇帝ナポレオンの兄にしてかつてスペイン王ホセ1世と称していたジョゼフ・ボナパルトは、亡命先のイタリアのフィレンツェで西暦1844年に亡くなっている。その遺体は、フランスの首都パリにあるアンヴァリッド(廃兵院)に葬られたらしい。亡くなってまで弟の皇帝ナポレオンのお墓の横にいることになるとは思わなかっただろうけどね。

次のページ



姉妹サイト ヨーロッパ三昧

ヨーロッパ三昧

このサイト「ヨーロッパの歴史風景」の本館が「ヨーロッパ三昧」です。イギリス・フランス・イタリア・スペイン・ギリシャ・トルコ・エジプト・ロシア・アゼルバイジャンなど25国45編の旅行記を掲載しています。こちらも遊びに行ってみてくださいね。

「ヨーロッパ三昧」のトップ・ページのURLは、 http://www.europe-z.com/ です。

Copyright (c) 2002-2013 Tadaaki Kikuyama
All rights reserved
管理・運営 あちこち三昧株式会社
このサイトの画像 及び 文章などの複写・転用はご遠慮ください。