ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦1415年、ボヘミア(現チェコ)にあるプラハ大学の学長にして宗教改革者ヤン・フスが処刑された。


イギリスのオックスフォード大学から
ボヘミア(現チェコ)のプラハ大学へ

イギリスの首都ロンドンから車でも列車でも1時間ほどのところにある街オックスフォード。言うまでもなく、歴史あるオックスフォード大学のある場所だよね。

そのオックスフォード大学を舞台に、教会の堕落を激しく批判したのがウィクリフだった。14世紀の後半のこと。ウィクリフの考えは、ボヘミア(現チェコ)にあるプラハ大学にも及び、多くの人々に影響を与えたんだ。

ボヘミア(現チェコ)の宗教改革者 ヤン・フス

ボヘミア(現チェコ)の首都プラハ市内にある宗教改革者ヤン・フスの像 イギリスのウィクリフの考えは、ボヘミア(現チェコ)のプラハ大学の学長となっていたヤン・フスにも影響を与え、ヤン・フスはイタリアの中心ローマに陣取る教皇庁による贖宥状の販売を批判したんだ。(右の画像はプラハ市内にあるヤン・フスの像。)

しかし、ルクセンブルク家のボヘミア王ヴァーツラフ4世(かつての神聖ローマ皇帝ヴェンツェル)の支持を失った彼は、西暦1412年にはボヘミアの首都プラハを去ることとなってしまった。

ボヘミア(チェコ)の宗教改革者フスの処刑

西暦1414年、神聖ローマ皇帝ジギスムントはコンスタンツ公会議にヤン・フスを出席させる為に、彼に自由通行証を与えた。ところが、皇帝の自由通行証を持っていたにもかかわらず、ヤン・フスは捕らえられ、公会議で有罪とされてしまったんだ。

そして、西暦1415年7月、ヤン・フスは処刑された。彼を支持していたボヘミア(チェコ)の人々は抗議し、ボヘミアの首都プラハではフスを支持する人々とローマ教皇を支持する人々とが激しく対立することとなったんだ。

ボヘミア(チェコ)におけるフス派戦争の勃発

ボヘミア(現チェコ)の首都プラハ市内にある旧市庁舎 西暦1419年7月、処刑されたヤン・フスを支持し続ける人々が、ボヘミア王国(チェコ)の首都プラハにある市庁舎(右の画像)を襲撃し、役人を窓から放り出してしまった。

その事件に衝撃を受けたルクセンブルク家のボヘミア王ヴァーツラフ4世が翌月に急死。ヤン・フスのもたらした宗教上の争いに、ボヘミア王位の継承問題までも加わってしまったんだ。

年が明けて西暦1420年3月、ローマのカトリック教会はフス派に対する十字軍を宣言し、ここにフス派戦争が始まった。対するフス派の人々は火器と戦車を使った軍を組織して十字軍に対抗した。

ローマ教皇の意に従ったカトリックの十字軍は幾度もボヘミアに攻め込んだ。ところが、フス派の人々は十字軍を撃退。それどころか、物資の調達とフス派の教えを広めるために、フス派の軍隊はオーストリア、ポーランド、ドイツなどに遠征まで行ったんだ。

フス派戦争の終結

ところが西暦1434年、ローマ・カトリック側の和平の呼びかけを、フス派の中の穏健派が受け入れた。対して、フス派の急進派はカトリックとの和平を拒否し戦いを挑んだが敗北。

西暦1436年にはボヘミア王国議会がローマ・カトリックの提案を受け入れ、ボヘミア王国にはフス派穏健派とローマ・カトリックの二つが共存することとなった。また、亡くなったボヘミア王ヴァーツラフ4世の弟にして神聖ローマ皇帝・ハンガリー王だったルクセンブルク家のジギスムントもボヘミア王として即位したんだ。

プラハ旧市庁舎の仕掛け時計

ところで、上に書いたフス派戦争のきっかけを作る舞台となったプラハの市庁舎なんだけど、今では海外からの観光客を集める名所となっているんだ。

ボヘミア(現チェコ)の首都プラハの旧市庁舎にある仕掛け時計 ボヘミア(現チェコ)の首都プラハの旧市庁舎にある仕掛け時計 ボヘミア(現チェコ)の首都プラハの旧市庁舎にある仕掛け時計 ボヘミア(現チェコ)の首都プラハの旧市庁舎にある仕掛け時計

但し、人々を集めているのはフス派の戦いの歴史ではなくて、大きな仕掛け時計なんだけどね。上の画像には旧市庁舎の仕掛け時計とそれを眺める観光客が写っている。

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