ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦1360年、イタリアの古都フィレンツェにサンタ・マリア・ノヴェッラ教会が完成した。


フィレンツェ中央駅から眺めたサンタ・マリア・ノヴェッラ駅

イタリアの古都フィレンツェには空港が無い。というわけで、ローマなどの空港に着陸したら、鉄道を利用してフィレンツェに向かうんだろうな。貸し切りバスを利用するツアーの場合は別だろうけどね。

鉄道でフィレンツェに入るならば、おそらくはフィレンツェ中央駅(正しくはサンタ・マリア・ノヴェッラ駅)に到着するだろうけど、その駅から眺めたサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の様子が下の画像なんだ。(バスがちょいと邪魔なんだけど。)

フィレンツェ中央駅(サンタ・マリア・ノヴェッラ駅)から眺めたサンタ・マリア・ノヴェッラ教会(イタリア)

このサンタ・マリア・ノヴェッラ教会なんだけど、西暦1246年に建設が始まり、西暦1360年に一応の完成を見たというフィレンツェでも歴史ある教会なんだそうな。但し、一応の完成を見たとはいえ、更に工事は続いていたんだけどね。

ちなみに、「ノヴェッラ」というのは「新しい」という意味の言葉らしい。古いけれども「新しい」わけだ。この場所には9世紀に建てられた古い礼拝堂があった。その建物を取り壊して建設されたものだから、「新しい」教会ということらしいよ。

サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の修道院には薬草園があり、そこで栽培された薬草を使って修道士たちが香水や薬を調合していたそうな。それが今も続く世界最古の薬局「サンタ・マリア・ノヴェッラ薬局」になっているとか。

その最古の薬局はフィレンツェの名家メディチ家の御用達でもあった。フランス王アンリ2世に嫁いだメディチ家の令嬢カトリーヌ・ド・メディチは、最古の薬局が調合した「王妃の水」を持ってフランスに向かったんだそうな。

歴史あるサンタ・マリア・ノヴェッラ教会

実を言えば、上の画像に見えているのは、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の正面じゃない。下の画像が教会の正面なんだ。ところで、西暦1360年に一応の完成を見たと書いたけど、この正面ファサードの工事が終わったのは、西暦1470年のことだった。そういうわけで、西暦1360年の完成というのは、「一応」にすぎなかったわけだね。

フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の正面ファサード(イタリア)

そんなサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の中にビザンティン帝国の皇帝やコンスタンティノープルの総主教、そしてローマ教皇エウゲニウス4世など東西の教会から多くの聖職者たちが集まったことがある。西暦1439年から西暦1443年にかけて東西両教会の統一をめぐる公会議が開催されたんだ。

フィレンツェに移ってくるまで、その公会議はフェラーラで開催されていたんだけど、国父コジモ・デ・メディチの申し出などもあり、フィレンツェに移転してきたらしい。

そしてフィレンツェにおいて東西両教会の統一に向けて一応の妥協案が成立したんだそうな。ところが西暦1453年にオスマン・トルコによってビザンティン帝国の都コンスタンティノープルが征服され、東西両教会の統一交渉は尻切れになってしまったんだそうな。

サンタ・マリア・ノヴェッラ教会にある名家の礼拝堂

サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の中には、フィレンツェの名家の為の礼拝堂がいくつもある。例えば下の画像は、ストロッツィ家(メディチ家と時に対立し、時に協力した名家)の礼拝堂の様子なんだけど、ナルド・ディ・チオーネによるフレスコ画「最後の審判」(西暦1357年頃)があるんだ。

フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会のストロッツィ家の礼拝堂にあるナルド・ディ・チオーネのフレスコ画「最後の審判」(イタリア)

また、ここに画像はないんだけど、教会の中にはスパニョーリ礼拝堂(スペイン人の礼拝堂)もある。というのも、西暦1537年にフィレンツェ大公(後にトスカナ大公)となったメディチ家のコシモ1世の奥方であるエレオノーラ・ディ・トレドは、当時のナポリを支配していたスペインの宮廷から来たスペイン人だった。その奥方の為にコシモ1世が贈ったのがこの礼拝堂だった。故にスペイン人の礼拝堂というわけだ。

サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の芸術作品

イタリア・ルネサンスの中心だったフィレンツェにある歴史あるサンタ・マリア・ノヴェッラ教会では、多くの芸術作品を見ることも出来る。例えば、下の画像はゴンデ家の礼拝堂にあるものなんだけど、ブルネレスキによる「十字架のキリスト像」(西暦1425年頃)なんだ。

フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会のゴンデ家の礼拝堂にあるブルネレスキの十字架のキリスト像(イタリア)

ブルネレスキといえば、後に建築家としてフィレンツェのドゥオモ(大聖堂)の完成に大きく貢献した人物だよね。そんなブルネレスキのこの作品を見て、彫刻家ドナテッロが「これぞキリストだ」と絶賛したんだそうな。

そんなドナテッロもフィレンツェのサンタ・クローチェ教会に十字架のキリスト像を制作している。でも、彼は自分の作品について「キリストではなく、ただの人だ」と低い評価をしていたんだそうな。芸術家って、難しいね。

次のページ



姉妹サイト ヨーロッパ三昧

ヨーロッパ三昧

このサイト「ヨーロッパの歴史風景」の本館が「ヨーロッパ三昧」です。イギリス・フランス・イタリア・スペイン・ギリシャ・トルコ・エジプト・ロシア・アゼルバイジャンなど25国45編の旅行記を掲載しています。こちらも遊びに行ってみてくださいね。

「ヨーロッパ三昧」のトップ・ページのURLは、 http://www.europe-z.com/ です。

Copyright (c) 2002-2014 Tadaaki Kikuyama
All rights reserved
管理・運営 あちこち三昧株式会社
このサイトの画像 及び 文章などの複写・転用はご遠慮ください。