ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦1204年、第4回十字軍がコンスタンティノープルを攻略し、ラテン帝国が成立した。


第4回十字軍とヴェネツィア

中世イタリアの海洋都市国家といえば、その先駆的な存在はアマルフィであり、次いではそのアマルフィを略奪したピサだった。でも、13世紀初頭の第4回十字軍に大きな影響を及ぼした海洋勢力は、これから地中海に飛躍していくヴェネツィアだった。

イタリアの海の都ヴェネツィアの朝、海とゴンドラ

ヴェネツィアは第4回十字軍の遠征の為に海上輸送を担うのみならず、海軍力の中核ともなったらしい。(上の画像は朝もやの中のヴェネツィアの海とゴンドラの風景。)

第4回十字軍とエジプト

その頃のイスラム勢力の柱となっていたのは、イングランド王リチャード獅子心王と戦ったサラディンによって樹立されたアイユーブ朝だった。そのサラディンは西暦1193年に亡くなったけれども、アイユーブ朝の首都カイロ(今のエジプトの首都)はイスラム勢力の中心となっていた。

エジプトの首都カイロにあるムハメド・アリ・モスクの内部の灯り

というわけで、キリスト教徒の為に聖地エルサレムを奪還することを目指した第4回十字軍も、エジプトのシ首都カイロの攻略を目指そうとしたというわけだ。(上の画像はカイロにあるムハメド・アリ・モスクの内部の様子。)

ところが、そのエジプトを重要な貿易の相手としていたヴェネツィアは、エジプトに対する攻撃を支援しないと約していたらしい。加えて、海上輸送と海軍力に関する対価の支払いの為の十分な資金を集めることができなかった十字軍は、ヴェネツィアの意向に従わざるを得なくなっていた。

第4回十字軍によるコンスタンティノープル攻略とラテン帝国

他方、その頃のビザンティン帝国では、帝室内部での帝位争いが続いていた。その争いに敗れたビザンティンの皇子アレクシオス4世は、第4回十字軍に支援を要請してきた。ビザンティンの帝位を獲得した後には十字軍に参加し、資金の拠出も行うとの申し出もあり、第4回十字軍はビザンティン帝国の首都コンスタンティノープル(今のトルコのイスタンブール)に向かうことになったわけだ。

結局、西暦1203年に第4回十字軍はコンスタンティノープルを攻略し、亡命していた皇子アレクシオス4世はビザンティンの皇帝となった。ところが、新しい皇帝アレクシオス4世は、財政難に加えて権力を確立することも出来ず、十字軍に対する約束を果たすことが出来なかった。更にはアレクシオス4世は暗殺されてしまったんだ。

そんなわけで、一旦はコンスタンティノープルを攻略したにもかかわらず何の見返りも獲得できなかった十字軍は、再びコンスタンティノープルに対する攻撃を始めた。西暦1204年のことだった。

トルコのイスタンブール(かつてのコンスタンティノープル)に見るアヤ・ソフィア大聖堂

再びコンスタンティノープルを攻略した第4回十字軍の兵士たちは街になだれ込み、あちこちで虐殺と破壊を繰り広げた。上の画像にあるアヤ・ソフィア大聖堂でも多くの人々が命を奪われたらしい。

そんな状況下、コンスタンティノープルを首都とするラテン帝国が成立した。その皇帝となったのは、第4回十字軍に参加した貴族の一人であるフランドル伯ボードアン9世だった。ラテン帝国はコンスタンティノープルのみならず、エーゲ海の島々をも領有した。例えば、今では多くの観光客を引き寄せるサントリーニ島も彼らの支配下にあったんだそうな。しかし、あちこちでビザンティン帝国の残存勢力が生き残っていた。

コンスタンティノープルから奪われた聖遺物

ローマサン・ピエトロ大聖堂を中心とするカトリックを信仰する人々の支配下に落ちたコンスタンティノープルからは、多くの聖遺物などが奪われ、イタリアなどに持ち去られてしまったらしい。

イタリア南部にあるアマルフィ大聖堂のクリプトで見た聖アンデレ像

その代表が西暦1206年に持ち去られた聖アンデレの聖遺物かな。その聖アンデレの聖遺物はイタリア南部のアマルフィに移され、アマルフィ大聖堂地下のクリプトに埋葬されている。上の画像はそのクリプトにあるお墓の上に建てられた聖アンデレ像なんだ。

ついでに、もう一つ。第4回十字軍の際にコンスタンティノープルから奪われたお宝(聖遺物じゃないけど)がある。それがヴェネツィアのサン・マルコ寺院を飾る4頭の馬の像だった。その後、西暦1797年にヴェネツィアを屈服させたナポレオンによって、4頭の馬の像はフランスの首都パリに持ち帰られた。西暦1815年にはヴェネツィアに戻されたんだけどね。(ちなみに、この4頭の馬の像はアレクサンダー大王に仕えた彫刻家リュシッポスの作品なんだそうな。)

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