ヨーロッパの歴史風景 近代・現代編




西暦 1945年2月13日、ドイツの古都ドレスデンに対して連合国軍による大規模な爆撃が行われた。


連合国軍の爆撃を受けた古都ドレスデン

旧東ドイツの南部にドレスデンという街がある。エルベ川のほとりにある歴史ある街(下の画像)ということで、エルベのフィレンツェとも呼ばれる古都なんだ。

エルベのフィレンツェとも呼ばれた古都ドレスデン(ドイツ)

そんな古都ドレスデンに対して、第2次世界大戦末期に連合国の空軍によって大規模な爆撃が行われた。西暦1945年2月13日から15日にかけてのことだった。フランス東部アルザス地方においてはドイツ軍が駆逐され、イギリス軍・アメリカ軍がライン川を越えてドイツに進撃しようとしていた。他方で東からはソ連軍がドイツを目指していた。そのソ連軍の進撃を支援する為のドレスデン爆撃だったとされている。

ドレスデン爆撃の第一波

西暦1945年2月13日の夜遅く、イギリスの爆撃機二百数十機がドレスデンに飛来し、主に焼夷弾を投下した。炎に包まれた多くの建物の中には、下の画像にある十字架教会もあった。

古都ドレスデンの十字架教会(ドイツ)

12世紀から続く長い歴史を持ち、16世紀からはドレスデンにおけるルター派信仰の中心となっていた教会だった。但し、この教会は火災や戦争によって何度も破壊され、その度に建て直されたものだったけどね。例えばサンスーシ宮殿で名高いプロシア王フリードリヒ2世が七年戦争の際にこの街を砲撃したんだけど、この十字架教会も被災して後に再建されたそうな。

話を第2次世界大戦時のドレスデン爆撃に戻すけど、爆撃によって燃え上がった十字架教会の扉が再び信者たちに開かれたのは、西暦1955年のことだったそうな。

ドレスデン爆撃の第二波

続いて2月14日未明には第二波の爆撃が行われた。500機以上ものイギリス空軍機がドレスデンを襲い、二千トン近い爆弾を投下したそうな。そんな激しい空爆の中、ザクセン公国・ザクセン王国の支配者だったヴェッティン家ツヴィンガー宮殿の多くの建物も破壊されている。

古都ドレスデンのレジデンツ城(ドイツ)

多くの建物から構成されているツヴィンガー宮殿の再建工事が始まったのは西暦1960年代のことだったそうな。(上の画像は宮殿の中にあるレジデンツ城。その最も古い部分は14世紀にまで遡ることができるらしい。)

ちなみに、ツヴィンガー宮殿の厩舎中庭の外壁には「君主の行列」がある。高価なマイセン磁器を2万3千枚も使って、ザクセン公やザクセン王など35人の君主を描いたものなんだけど、ドレスデン爆撃による損害は生じなかったそうな。

アメリカ空軍による第三波・第四波爆撃

ドレスデン爆撃は更に続く。アメリカ空軍機による第三波は2月14日の午後、その翌日には第四波の爆撃が行われた。

古都ドレスデンのゼンパー・オペラ(ドイツ)

三日間にわたるドレスデン爆撃によって破壊された建物の中には、ザクセン王国の宮廷歌劇場として西暦1841年に建てられたゼンパー・オペラも含まれていた。名高い作曲家ワーグナーが西暦1843年から指揮者を務めたゼンパー・オペラは、爆撃によって完全に破壊され、その再建工事が完成したのは西暦1985年のことだった。

ドレスデン爆撃についての議論

ザクセン公国・王国時代から続く古都であり、多くの歴史的な建物のあるドレスデンではあるけれども、そこには軍事基地や軍需工場などは無かったとされている。しかも、ドイツの著しい劣勢は既に明らかになっていた。そんな状況で無数の一般市民をも犠牲にする無差別爆撃が必要だったのかとの疑問が示されている。対して、戦争終結を早める為には有意義だったとの主張もあるんだけど。

それぞれの疑問・主張の当否を判断することは難しい。でも、ドレスデンの街の9割近くが破壊されたことは事実なんだそうな。そして爆撃による死者の数については諸説ある。当時の街の人口は60万人ほどだったらしいけど、戦火を逃れて街に入っていた人々は十数万人を越えていた。そんな状況の故に死者の数もわからないみたい。数万人との説もあれば、十数万人とする説もある。広島への原爆投下による死者に匹敵する数の人々が亡くなったんだ。

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