ヨーロッパの歴史風景 近代・現代編




西暦 1952年、欧州議会がフランス東部アルザス地方の街ストラスブールに設置された。


多くの人々が集まるフランス東部アルザス地方

下の画像はフランス東部アルザス地方の街ストラスブールにあるプチ・フランスの様子なんだけど、このプチ・フランスに限らずアルザス地方は各国から多くの人々が集まる人気の観光地だよね。

フランス東部アルザス地方の街ストラスブールにあるプチ・フランスと多くの観光客

ストラスブールに限らず、かつてのアルザス・ワインの取引の中心地だったコルマールにも古い街並みが残っているし、ブドウ畑に囲まれたリクヴィールなんて素敵な街もある。ワインも美味しいし、シュークルートなどのアルザス名物料理も美味しいよね。

でも、このアルザス地方の歴史から考えれば、東西から押し寄せてきたのは武器を持つ蛮族や兵士たちの方が多かったのかもしれない。4世紀から5世紀にかけては、ゲルマン系アルザス人やフン族がアルザス地方に侵入している。

中世においては概ね神聖ローマ帝国の領地だったけれども、三十年戦争ではスウェーデン軍によって占領され、その後はパリ近郊のヴェルサイユ宮殿の造営で名高いフランス王ルイ14世太陽王によってフランスに併合されたんだ。

その後もご承知の通り、普仏戦争第一次世界大戦第二次世界大戦と頻繁に起きる戦争の度に軍隊が東西から押し寄せ、アルザス地方を争奪戦の対象としたわけだ。

アルザス地方のストラスブールに設置された欧州議会

そんなわけで常に戦火に巻き込まれてきたアルザス地方の人々にとって、画期的なものがやって来たのが西暦1950年のこと。その年、ストラスブールで欧州評議会が開催された。その2年後の西暦1952年には、常設の欧州議会(下の画像)がストラスブールに設置されたんだ。

フランス東部アルザス地方の街ストラスブールにある欧州議会の議場

アルザス地方の平和の為には、ヨーロッパの平和が必要だった。欧州議会がシンボルとなっている欧州統合の動きこそ、アルザス地方の平和を確立する希望だった。

他方で、フランスにおけるアルザス地方はフランスの端っこ、ドイツにおけるアルザス地方もドイツの端っこ。でも、統合された欧州にあっては、その中心に位置するのがアルザス地方だったんだ。

アルザス地方出身のの政治家ピエール・フリムラン

その頃のフランスの政治家にピエール・フリムランがいる。西暦1907年にアルザス地方(当時はドイツ領)で生まれたピエール・フリムランは、第二次世界大戦勃発後に召集されてフランス軍兵士となった。やがてドイツ軍の捕虜となったが脱走し、ヴィシー政権下において法律家となった。

第二次世界大戦が終わると、ピエール・フリムランはストラスブールで政治家としての道を歩み始めた。やがてフランス中央政界で入閣したピエール・フリムランは、農相・貿易相などを歴任。他方で、アルザス地方の中心都市であるストラスブールに欧州議会(下の画像はその議場内部の様子)を誘致する活動に取り組んだんだ。

フランス東部アルザス地方の街ストラスブールにある欧州議会の議場の内部

その後のピエール・フリムランは、西暦1958年にフランスの首相となった。ところが、当時のフランスはアルジェリアの独立戦争の泥沼に入りこみ、収拾がつかない状況となっていた。

なんとか事態の収拾を目指したピエール・フリムラン首相は、第二次世界大戦におけるフランスの英雄ド・ゴールと会った。フリムランが首相を辞任すると同時にド・ゴールのフランス政界復帰の道を開いたんだ。ド・ゴールに対する評価には色々とあるだろうけど、ともかくも結果としてフランスはアルジェリア独立戦争を収拾することができたわけだ。

その後の欧州統合、欧州連合、ユーロの登場

他方で、ストラスブールに欧州議会を設置した後も、欧州統合は進んでいった。西暦1957年にはローマ条約が結ばれ、欧州経済共同体 (EEC) と欧州原子力共同体 (Eurotom あるいは EAEC) が成立した。

西暦1992年にはマーストリヒト条約が結ばれ、その翌年には欧州連合 (EU) が成立した。そして西暦2002年には欧州単一通貨ユーロの流通も始まったわけだ。(下の画像は 20ユーロ紙幣。)

欧州連合の通貨 20ユーロ紙幣

その後、西暦2012年にはギリシャのユーロ離脱が懸念され、他にもスペインやイタリアなどが債務危機に瀕し、欧州あるいは世界全体に暗雲をもたらしている。各国のエゴが欧州全体で負の循環を惹き起こして欧州の解体に繋がるような事態にならないことを望むよね。



このページに掲載している画像(20ユーロ紙幣の画像を除く)は、「ヨーロッパ三昧」の読者である Kaoringo さんから送っていただきました。Kaoringo さん、有り難うございます。

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