ヨーロッパの歴史風景 中世編




西暦911年、ノルマン人ロロ(あるいはロベール)を支配者とするノルマンディー公国が、フランス北部に誕生した。


フランス北部のヴァイキングとノルマンディー公国

9世紀にセーヌ川を遡ってフランスの首都パリを襲撃したヴァイキング(ノルマン人)たちは、10世紀の初頭にはフランス北部に定着し始めていた。

そのヴァイキングたちをイタリアの首都ローマを中心とするカトリックのキリスト教に改宗させようとしていたのが、ルーアンの大司教ヴィトーだった。彼は当時の西フランク王シャルル単純王にある提案をした。フランス北部に定住し始めたノルマン人をして、ヴァイキングに対する防波堤にせよと。つまりは毒を以て毒を制するわけだね。

その提案を受け入れた西フランク王シャルル単純王と、フランス北部のヴァイキング(ノルマン人)の首領ロロとの間で、西暦911年にサン・クレール・シュール・エプト条約が成立した。ここにノルマンディー公国が成立したわけだ。(下の画像は現在のノルマンディー地方の風景。)

フランス北部ノルマンディー地方の風景

余談ながら、ノルマンディー公となったロロというヴァイキング(ノルマン人)の首領については、殆どわかっていないらしい。ある資料では、ロロはデンマークの貴族だったとされている。しかし、ノルウェーの出身だったとする記録もあるんだそうな。ついでながら、アイスランドに植民したヴァイキングもノルウェー系だったとか。

キリスト教に改宗したロロ(あるいはロベール)と
拡大するノルマンディー公国

ノルマンディー公となったヴァイキングの首領ロロは、キリスト教に改宗し、ロベールという洗礼名を授かった。以後、彼と彼の子孫たちは、フランス北部において勢力を拡大していったんだ。

フランス北部ノルマンディー地方のバイユーの街とバイユー大聖堂の風景

西暦923年には、バイユー(上の画像はバイユーの街とバイユー大聖堂の風景)、ル・マン、セーなどの土地をノルマンディー公国に組み入れた。更に西暦933年にはコタンタン、アヴランシュなどを支配下に入れたらしい。

そしてノルマンディー公ギョーム
あるいはイングランド王ウィリアム征服王

西暦1035年、ロベール悪魔公の跡を継いでノルマンディー公国の支配者となったのは、ギョーム庶子公と呼ばれる人物だった。中世ヨーロッパに興味を持っている人ならば、誰でも知っている人物だよね。

では、別の呼び名を書いておくかな。ギョーム庶子公、別名をノルマンディー公ウィリアム、あるいはイングランド征服王ウィリアム1世。西暦1066年にイングランド南部ペヴェンシーに上陸し、イギリスの首都ロンドンにあるウェストミンスター寺院でイングランド王の戴冠を受け、ロンドン塔を築いた人物だね。

ノルマンディー地方の街カーンと征服王ウィリアム1世が築いたカーン城(フランス)

上の画像は、ノルマンディー地方の街カーンの現在の様子。画像の左半分に写っているのは、ノルマンディー公ウィリアムが築いたカーン城の城壁なんだ。

余談ながら、歴代のノルマンディー公たちは後の世界遺産 モン・サン・ミシェルの修道院を財政的に支援していた。故にモン・サン・ミシェルの修道院はウィリアム1世のノルマン・コンクエストを支持し、結果的にイングランドに所領を与えられたらしい。その所領の中には、イギリス西南部コーンウォールセント・マイケルズ・マウント(フランス語ならばモン・サン・ミシェル)も含まれていた。そして、その島には、やはり修道院が建てられたんだ。

ノルマンディーとその後のイングランド王

そんなわけで、9世紀にフランスの首都パリを略奪し、やがてフランス北部ノルマンディーに定着したヴァイキング(ノルマン人)の子孫がイングランドの王となったわけだ。

でも、その後も長くノルマンディーとイングランド王家との関係は続いていくんだ。征服王ウィリアム1世の死後もその息子たち、イングランド王ウィリアム2世ヘンリー1世、ロベールたちはノルマンディーとイングランドで何度か戦っている。

更には、プランタジネット家のイングランド王ヘンリー2世もイングランドとノルマンディーなどを含むアンジュー帝国を築いたわけだ。そしてフランスとイングランドの百年戦争に至る。

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